[コメント] たまもの(2004/日)
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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冷めかけたデートを盛り上げようと、お道化て砂浜にわざと転ぶシーンに泣かされる。別れの後にもう一度ひとりぼっちで転覆を繰り返すのも泣かせる。切ないなあ。弁当の郵便局マークも、渡す三万円も、押入れから雪崩をうつ弁当のトレイも、別れに無言で差し出す手も切ない。コメディとペーソスをない混ぜにする見事なチャップリンの継承。女(人は、と云うべきか)はそもそも喋らないほうが魅力的で高貴なのではないのか、とさえ思わされる目から鱗の造形。もう若くはないボサボサ髪に瞳だけがあどけない林が見事にハマっており、ここに至った背景をも感じさせるのが素晴らしい。
そして本作は最後に捻る。日本映画の通例なら、最後の同衾のあと、死ぬのは林だろう。忍従の果てに。そして化けて出たりする。しかし本作は相手の吉岡睦雄を殺してしまう。そして彼女はボーリング玉とともに喋り始める。喋るとは決断だという哲学がここにはある。生き埋めには結婚前に裏切られた華沢レモンも同伴させる。お岩さんの時代とは違うんだぜ、と宣誓している。お岩さんのほうが作劇としては座りがいいだろうが、そんなことはしないのが現代の倫理観なのだという宣誓。なんたる反転、痛快な収束、これぞフェミニズムの成果だと思う。
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