[コメント] ホリデイ(2006/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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軽いラブファンタジーがお好きな方にはこれでいいのだろうが、決して嫌いではないナンシー・メイヤーズ作品だけに今一つ深みを伴った仕上がりにしてほしかったというのが正直な思いである。
まずロンドンとロスという場面設定が、単に「現実逃避するにはちょうどよいくらいに離れた距離」程度にしか生かされていないところがつまらない。もちろんイギリス訛りなど細かい部分に対する理解がこちら側に伴っていない点は「ごめんなさい」と言うしかないのだが、距離、季節感、生活スタイル、車線あるいは運転席、さらには道幅の違いくらいでしかその違いを示せなかったのはどうか。せっかくの恋愛ものなら、その違いを元としたすれ違いなどのワンクッションがあったほうが、見る側によりドキドキとした要素を与えたのではないかと思う。
また物語の構成上、2つのエピソードが比較されるのは仕方ないにして、まだそれでもロンドン側のキャメロン・ディアス&ジュード・ロウの描き方は、子どもたちのエピソードがいい具合に生かされてよくまとまっていたと思う。それに対して ケイト・ウィンスレットとジャック・ブラックのロス側は、最後に元彼を追い返すという基本設定のせいか、ケイトとジャックの恋愛感情の高まりの表現が希薄であるように思えてならない。さらにいうと、懐かしのイーライ・ウォーラック(個人的にはウォラックという表記のほうがしっくりくるのだが)の扱いに関しても、彼への敬意に伴う心に残る場面やいい台詞も用意されてはいたが、彼の存在感が圧倒的だっただけに、例えば彼の業績が称えられる式典へ向かおうとする彼の心の動きや、プールでの歩行訓練の努力の光景などがわかるカットがあともう少しあってもよかったのではないかと思えて口惜しかった。
しかしそんなことを言っていたら、ただでさえ長い上映時間がさらに長くなるわけで、その辺りは会話劇としての脚本自体にも今一つの精査があってもよかったのではないかとも思ったし、ラストでいきなりみんなを出会わせるという大団円もどうかと思った。さらに言うと、脚本家や作曲家が出てくる映画でありながらその脚本や音楽に秀でたものを感じないのは残念であった。
とはいうものの、ウォーラックを起用したことでもわかるように、様々な役者のカメオ出演や映画に関する小話、あるいは音楽を含めた映画自体への大いなるオマージュは大いに評価したいところで、色々と文句は言ってはみたものの、決して嫌いではないというか、むしろ好きと言っていいメイヤーズ作品であるからこその文句であることを、最後にもう一度言っておきたいと思う。
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