[コメント] プロジェクトBB(2006/香港)
映画を見終った人むけのレビューです。
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久々にジャッキー・チェンと組んだ前作『香港国際警察 NEW POLICE STORY』で、これ以上なくジャッキーをジャッキーたらしめてくれた監督べニー・チャン。今作も前作同様、ジャッキー感爆発のアクションコメディを見せてくれるのかと思っていたら、どうも地味でヌルーいお話に終始してしまっていた。
恐らくはこのお話、『赤ちゃんに乾杯!』やそのリメイクである『スリーメン&ベビー』などの「赤ちゃん映画」の影響を受けているのだろうけど、これらの公開から20年以上も経っている今、同じギャグを面子だけ変えて見せられてもそれほど笑えないんだよ。「赤ちゃんをあやすために合唱」だの「食べる物がわからなくてさぁ大変」だの「オムツの扱いにてんやわんや」だの、どれも「前に見たことあるもの」でしかない。要はこちらの予想をビタイチ超えてくれないんだ。パンフによれば「大げさなドタバタ喜劇、下品なコメディにはしたくなかった」ということだけど、その結果こんなつまらないギャグをブツ切れで見せられるんだったら、下品なコメディを真剣にやった方がもっといい映画になると思う。
本来「軽妙なアクションとほのぼのとしたコメディの融合」となるはずだった今作。それが「(ジャッキーにしてはだけど)ユルめのアクションとヌルい笑いの羅列」に落ち込んでしまった。やっぱりジャッキーでアクションコメディを撮る以上、そこで「アクションの比率を弱めて」なんてことをしちゃダメだと思うんだ。アクションは前作同様激しく、そしてそこに更に激しい笑いをツッコむことで、上質のコメディが持ち得るグルーヴ感というか、観ているこっちのテンションがバカ上がりしていくあの感覚を味わわせてもらわないと、こっちも木戸銭払った甲斐がないんだよ。
そして今作にマイケル・ホイが出ている以上、それは決して不可能な話じゃなかったはずなんだ。実際今作のマイケル・ホイは、「マイケル・ホイが演じなくても済む役」しかやらせてもらっていない。『Mr.Boo!』のあの気狂いじみたテンションに泣き笑いした僕ら世代にとって、ジャッキーとマイケルのそろい踏みは例え今であってもやっぱり夢の競演なんだ。“アクションの神様”ジャッキーと“コメディの狂人”マイケルを自由に使える権利なんて、誰もがおいそれと持てるものじゃない。例えこの二人に老いが訪れつつあるとしても、少なくとも目指す方向性だけは突き抜けたものであって欲しかったと思う。
ただ、今作に於いて手放しで絶賛すべき点が一つある。「フリーパスの嫁」シャーリーン・チョイの3段コスプレがそれだ。最初のゴスロリはそのまんまだから大したことないが、その次の“顔以外ニワトリ”の可愛さは凄まじい。さらにそこを突き抜けた3段階目の“スシ娘”に至っては、「その格好の物哀しさが裏返って可愛い」という高級テクニックの域に達している。これはプロの仕事だ。悶死するかと思った。
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