[コメント] 殯の森(2007/日=仏)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
この監督の作品に共通する自然描写は、何を意味するのか?
というと大げさですが、河瀬直美監督作品は今年の2月に見た『萌の朱雀』に続いて2作目で、その自然描写の見事さには圧倒されますね。
この映画も要所で見せる自然の映像が素晴らしく、この自然の姿の変化がドラマの分かれ目になっていて、見事でした。
『萌の朱雀』で見せた亡霊のような世界はこの映画で排除されて、もっと現実的な世界を見せています。
前半の人物像の整理で、いずれの登場人物もが過去に深い傷を負っていて、それが生死にかかわる深い傷であるにもかかわらず、老人介護の社会でそれを慰めあおうとする意思が示されます。
しかし、妻を亡くしたうだしげきと、連れ合いを亡くした尾野真千子がドライブに出かけて、農道で車が脱輪して、そのまま森の中へ入り込んでゆくシーンから、この映画は全く別の世界に入り込みます。
ロードムービーですね。
前半で語られる生と死に関するドキュメンタリータッチの語らいが予告編のようなもので、本当はこの森の中で過ごす瞬間をおらえたかったことがわかります。
何しろ聞きなれない「もがり」という儀式が、死んだ人が復活するまで敬いながら遺体を置いておく儀式だというのですから、この森の中のシーンがまさに三途の川。
途中で激流に流されそうになるシーンが最も表現としてはハードなシーンですが、それも淡々と終わります。
男が亡くした妻の幻影とダンスするシーンは劇的でしたね。
人の生きる道か必ずしもひとつではないと思いますが、この映画の登場人物は常に過去にこだわって生きているんですね。
2010/05/01 自宅
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