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[コメント] 殯の森(2007/日=仏)

「こうしゃんなあかんってこと、ないから」な境地に達したかのような監督の癒しフィルム。説明不足を感じつつ体温を感じる感動もあったので、私も深く考えずに☆四つ。080521
しど

作中の和尚の話では、生きることには、食べ物を食べるだけの「ただ生きている」状態と、声を掛け合い、互いの優しさに触れる「人間として生きている」状態の二通りがあるという。真千子はしげきと触れ合い、モガリの儀式を経ることで「人間の生」を取り戻していく。

擬似ドキュメンタリーな手法のせいもあり、やや説明不足なところがある。解説を読むと、真千子としげきが車で向かっていた墓と、森の中の亡骸を眠る墓と、二種類の墓があるようだが、そういうのはわからなかった。もっとも、説明を必要とするほどの複雑な内容は無い。公式サイトで見られる予告編だけで全てが語られているシンプルな作品。監督自身も「こうしゃんなあかんってこと、ないから」と開き直って、小細工など止めて、ただただフィルムを回し、編集していった、そんな雰囲気すらある。なので、内容を読むよりも、映っているモノを感じていればいいのかと、ただ、眺めていた。

全体を通して、長回しを多用した抑揚の少ない作風だけど、印象的なシーンはいくつもある。しげきが見る亡き真子の幻想や、真千子が抑えていた感情を発露する川のシーンなど。しげきと真千子が交わるシーンは、いずれも心に残る。心を閉ざした相手には、ときには強引さも必要なのかと思わせる、無邪気にスイカを口に押し込むシーンがとくに好きだ。

しげき役は本作が初役者であり、真千子役も『萌の朱雀』の時は素人だった。演技も「こうしゃんなあかんてこと、ないから」ってことなのかもしれない。

(評価:★4)

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