数々の政治的隠喩は「本気ではない」？ イヤイヤ、松本本人がどこまで拘っているかは別として、充分「本気」だと思うよ。そこは<映画>をよく解っていてエライよ。予告篇で散々使った「大日本人だよ！」という台詞の出しドコロも佳かった(オレ含め館内でまばらに笑いアリ)。

しかし最初のアイデアだけでは最後まで引っぱる力は無かった。アメリカンヒーローの登場とエンディングはいわば「大コケ」みたいなもので、そんなオチでは長篇映画は締められない。もう一ヤマ、もう一人登場人物がほしかった。そこを最初のネタだけで引っぱりきろうとしたのが松っちゃんの「生真面目さ」であり、デビュー作の失敗といったところだろう。松っちゃんは「劇場がドッと湧くような面白い映画を創りたかった」とか言っていたが、その割には一方で自分の小ネタにこだわり過ぎてしまった。『アマデウス』でサリエリが言ってた事にもそれなりに理があるのだ。

期待を込めて、大甘の☆3.9点。