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[コメント] ダメジン(2006/日)

あいたたたた。いたいいたい。「インド」という言葉にたまらない甘酸っぱさを感じる私には実にイタイ映画。
林田乃丞

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 猫じじいは「ムードがあるからインドに行け」と言う。ゴールデンチャイルドは「インドに行って地球を救え」と言う。どちらも、あまりにも馬鹿げた、下らない、愚にもつかない提案である。だが、実際問題として一度でも真剣に「インド行き」を考えたことがある者にとっては、これほど耳の痛い映画もないんではないだろうか。誰かは言った「インドには人生がある」、誰かは言った「インドで自分自身を見つめなおしたい」、また誰かは言った「インドで麻薬やりまくって、そのままのたれ死んでやる」……ある特定の若者たちにとって「インド」というキーワードは現実から容易く逃避しながら何となく自己を正当化できるファンタジックな言葉だった。

 むかし私の周りでそんなことを言っていた奴らのほとんどは実際インドに行かなかったし、私も行かなかったし、行った奴もすぐ帰ってきて普通に就職したもんだ。当時私たちが胸をかきむしる思いで唇を噛み締めて血を流しながら口にしたインドへの憧憬の内実は、今考えれば猫じじいやゴールデンチャイルドの言う「ムード」や「地球を救う」と大差ない。大差ないというよりむしろ、私たちのほうがよっぽど幼稚だった。

 だから私はこの、あまりにも馬鹿げた下らない愚にもつかないテーマを掲げた映画を切り捨てることができない。それどころか、実にリアルに受け取ってしまう。一度はインドに行こうと決意した若者がインドに行くのをやめるまでの物語……それは、10数年前私が体験したあの苦い日々と完全にシンクロしてくるのだ。誰に勧めようとも思わないけれど、『ダメジン』は私にとって珠玉の青春映画だったと、できるだけ小さな声で言っておきたいと思う。

(評価:★4)

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