[コメント] 次郎物語(1955/日)
次郎の少年時代を演じる大沢幸浩君て、成瀬の『秋立ちぬ』の主人公や『女の座』で高峰秀子の息子役を演じた大沢健三郎君と同一人物じゃないだろうか。兄弟かもしれないが、年齢も近そうだし、はっきり言って顔が瓜二つだ。それはともかく、たいへん大人びた鮮明な顔立ちの持ち主で、後半部で次郎の中学生時代を演じる市毛勝之君のほうがむしろ子供じみて見え、わりを食らっちゃってる。というか、これを同じ人物のその後の話としてみるのに相当違和感を感じる。
一つには、突然大人の世界に放り込まれて無口になる次郎少年の、頑固さの根拠となるものがエピソードとしては担保されてないので、彼以外の少年が演じたらただの阿呆に見えてしまったのではないか、と思うわけだ。もちろん映画としてそれはありなんだけど、その映画を支えていたつっかえ棒が、後半部では突然外されてしまったように感じたわけ。まあ、市毛君が悪いわけではないのだけれど。
もう一つは、エピソードの一つ一つもたいして面白くないが、それぞれに関連性が薄く、時系列に並べられているだけで構成みたいなものもないので、ただでさえバラバラに感じてしまうのだな。
そうは言いつつも年のせい?か「母モノ」に弱くなってきてて、ラストのエピソードなんかでは、わかっちゃいるけど/馬鹿馬鹿しいとは思うけど、ついしんみりしてしまう。また木暮実千代さんがとても綺麗でね。彼女の作品はいくつか見たことあるけど、今まではあまり印象に残ってないか、『新平家物語』『お茶漬けの味』なんかでは悪い印象すらあったほど。富士額に黒目の大きな眼がしっくり来る、和服の似合うきれいなお母さんでした。例えて言うなら、藤原紀香に女磨くの止めさせてモンペを着せたらこんな感じか・・・(ゴメンゴメン、俺は『SPY_N』以降、何があっても彼女を応援することに決めてたんだ・・・)。
あと、清水宏監督の作品て、「口の聞き方を知っている」女性がたくさん出てくるのが嬉しいね。木暮実千代にしても花井蘭子にしても、女主人として下男下女に対して物を言うとき、もちろん遠慮はないけど威張り散らすのでもなく、適度な威厳を含んだ言葉が且つ自然な感じで出てくる。女中の方でもそれに対し、必要以上に媚びへつらう感じはなく、案外ズケズケしていたりする。私は、実生活ではこういう体験(上も下も)はなく、映画でも部活の先輩/後輩関係に近いような感覚で描いたものしかあんまり見たことないので、なんかとてもためになりました。ああ、言うまでもなく望月優子の台詞回しも絶妙でした。主家との関係がイマイチわかりずらかったんだけど、彼女は名優でしょう。
70/100(07/07/31記)
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