[コメント] 拝啓総理大臣様(1964/日)
シリーズ前2作より切実なテーマだが、あまりにも特異な人々にスポットを当てすぎてしまい、同感の拍手を送りづらくなっているのではないか。われわれは壺井文子を見ただけで笑おうとした口をつぐんでしまう。彼女の存在はしかし、冷厳なる事実なのだ。
黒人とのハーフが問題になっていた時期といえば、『キクとイサム』からTVの『サインはV』に至る時代だろうか。今でこそ黒人は珍しくもないが、当時彼らを眺める目は「戦争被害者」を見る目に等しかった。予告に謂う「ケッタイな人々」どころか、フリークスを見る目だったのだ。
壺井は予告編ではケッタイな姉ちゃんに過ぎないが、本編ではあまりに重いものを背負いすぎている。ゆえにこの作品は笑劇にはなり得なかった。
そして、それに対して今までの「天皇陛下」というあまりに大きすぎた存在と、失言一つで首が飛ぶ「総理大臣」は格が違いすぎやしないか?(「貧乏人は麦を食え」なんて今どれだけの人々が知っている言葉だろう?)そういう意味でこの映画は「刹那の映画」である。『拝啓天皇陛下様』は「あの」作品しかあり得ないが、本作はその時その時にあわせて自在にリメイクできる。そのあたり、野心作ではあるが失敗作でもあったと認めねばならないだろう。
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