[コメント] 鬼軍曹ザック(1950/米)
冒頭の見事な緊迫感から始まる、あっという間の80分。寺院での銃撃戦などB級映画の面白さに加え、B級映画であるにもかかわらず脚本が素晴らしい。猩紅熱で無毛になった兵士の髪の毛は、その後生えたのだろうか。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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捕えられた北朝鮮将校と、黒人衛生兵及び日系二世の兵士との会話がすこぶる興味深い。お前ら国に帰ったらバスは後部座席にしか座れないのだろうと北朝鮮将校に詰られた黒人衛生兵は、100年前はバスに乗れなかったし、50年後には真ん中の座席に座るさと応える。1950年に撮られたとは俄かに信じ難い歴史認識である。合衆国の理念への信頼がこれを語らせたとも取れるが、どうも違う。
本作がレイシズム映画なら、ザックを発狂などさせないだろう(この件には得も云われぬ滑稽感がある)。戦場での生を無理からに肯定した『最前線物語』とは違い、ザックは他の兵士と同じく亡霊に近づく運命にあり、韓国の孤児や北朝鮮将校、兵役拒否経験のある上官らと等距離で描かれている。「家族を守るためなら戦う」と銃をぶっ放す兵士は、それなら別に朝鮮半島で戦うことはないじゃないかと突っ込みを入れる間もなく、無意味に戦死する。部隊の一部だけ生き残るラストは『七人の侍』に先行すること4年。あっけなさが感慨を呼ぶ。
韓国の国歌が「オールド・ライジング・サン(蛍の光)」のメロディにのせて歌われたのは48年まで。朝鮮戦争は50年からだから、韓国の孤児が米兵のオルガンにのせて国家を歌う件は事実誤認ともとれる。がしかし、そんなことはどうでもよいと思わせる求心力が、このシーンにはこもっている。孤児は祖国統一を歌うのである。
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