[コメント] 題名のない子守唄(2006/伊)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
この映画、次第に判明するんだけど、のっけからネタバレするとイタリア、というかヨーロッパが抱える問題を映しだしています。
東から仕事を求めて辿り着く若い女性。
「レストランやバー、ホテルで働ける」と甘い誘惑に惑わされて離国。
着いてみるとパスポートは取り上げられ、最初に凄い暴力を受けて脅され、売春婦として道端に立たされる。稼ぎが少なければ全裸のまま宙吊りにされて鞭で打たれる。
『セックス・トラフィック』で犠牲になっていた女性らと同様のシチュエーションが残念ながらこの映画でも展開されます。
余りに救いのないイレーナ。なので、このネタバレでは、僕がイレーナの弁護人となって、彼女の無罪、又は最低でも執行猶予を勝ち取ります。
まず、売春を斡旋していたボス(とりあえずココではハゲと呼びます)の人格を白日に晒し、全てに於ける利益考量の判断材料にしたいと思います。
このハゲは、人身売買で買い取った女性に売春をさせる以外にもう1つのサイドビジネスを持っていました。それは、売春で妊娠した女性のお腹の中の子を子供を欲している夫婦に売る、というもの。
このハゲは、完全に女性の身体を道具としか見ていません。
イレーナは、この状況から逃げ出すためにハゲを刺しました。このことに関しては、正当防衛・もしくは緊急回避による罪の減免が成立する余地があると思われます。
性の奴隷として売春させられ、妊娠したら産む機械として扱われ、12年に9回も出産させられていた彼女。日常的に暴力と陵辱を受け、そんな中で出会った最愛の人・マッテオまでもこのハゲに殺害されてしまいます。
臨月も間近になったイレーナが、広大なゴミ捨て場の中でお腹の子の父親・マッテオの死体を見つけるシーンでは彼女の声にならない悲鳴が心の奥までしっかりと届きました。
マッテオと自分の間にできた子供に会いたい。。。
そう思った彼女が、今まで諦めていた環境から抜け出すためにハゲを刺したのです。正当防衛の成立は間違いないものと思われます。
彼女が立ち去る際にハゲの隠し金を当面の生活費に持ち逃げしますが、この金は公序良俗に反する行為で得られた不労所得。その点を鑑みた上で、イレーナらの強制売春で稼いだ金が彼女の元に還元されたと思えば、この件に関しても強盗罪の立件は困難ではないでしょうか。
イレーナは出産に立ち会った助産婦からの言葉を信じて、自分の子供が養子として引き取られたであろうアダケル家を探し出します。
その家から出された生ゴミの中身を調べ、味の好みを知り、アダケル家の家政婦に適するようリサーチを進めるイレーヌは、当家の家政婦とも親しくなります。既に家政婦がいる家に雇い入れられるには、今の家政婦に怪我でもしてもらわなくてはなりません。
イレーナはここでこの家政婦を階段で転落させますが、そのことを「故意」だと自白するシーンはありません。
なので、この件に関しては法廷戦術としてイレーナに黙秘権を行使させます。
後に、死んだと思われたハゲが再度イレーナに強迫・暴行を仕掛けてきます。
あろうことか、このハゲはイレーナに嫌疑が掛かるように小細工をした上で彼女の雇い人であるアダケル夫人を殺害してしまいます。
この凶行に屈したイレーナはハゲと話し合うために密会しますが、ここでもハゲは暴行を加えてきます。彼女が押し倒した勢いでハゲは頭を強打して死亡するわけですが、明らかに正当防衛が成立すると思われます。ハゲの検死をすれば致命傷が何であるかは明らかなはずです。
なお、個人的には、このハゲから奪った金を、娘と信じたテアの預金口座に毎月「前・家政婦」名義で振り込んでいたイレーナに母の愛を、前・家政婦への謝罪の意を感じ取ることができました。どうしても無罪が嫌なら、検事さん。今なら司法取引にいつでも応じますよ。
仮にイレーナがハゲを強盗傷害及び傷害致死に追いやったとしても、必要十分に情状酌量の余地があるものと思われます。
裁判長!
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