[コメント] サウスバウンド(2007/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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「国がなくなりゃ弱肉強食の世界だ」なる子供同士の会話があるが、国があるのになくならない弱肉強食はどうするのだ、と話は展開するのだろう。東京篇の息子の暴力事件が、沖縄篇の親父の実力闘争に重ね合わされる、という構成なのだろうが、息子にその自覚が芽生える描写はない。沖縄で家族が住み着く土地は昔の共有地・入会地の類なのだろうが、これも説明してくれない。「この島のレジスタンス」の歴史が何なのか判らず、本編と共振しない。開発業者への対向措置として豊川悦司の親父が法廷闘争を志向しないのは、法的に無理なのか、ただ親父にそちらの興味がないのか、どちらか判然としない。
という具合で、どうにも痒い所に手が届かないのだ。加えて演出も不足気味。東京の子役たちは下手糞でいけないし、キャバレーのお姉さんたちの件が何の意味があったのか不明だし、一家の舟遊びの件は空がどんより曇っていて弾けない。何より全然撮れていない。収束で両親が小舟で去って行く件は多分『小さな恋のメロディ』の引用であり、この子供のような大人を賞賛している訳なのだろうが、あの『メロディ』の名シーンと比べるべくもない。80年代前半の尖っていた森田ならどう撮っただろうと懐かしむばかり。
ただ、シネスケで原作は面白いのに、というコメントを読ませてもらって、原作読んでみようかな、という気にさせてくれたという余得はあった。こういうある種過激な題材を映画化してくれただけで良しとしたい気持ちがある。フーテンの私は単純に憧れるのだった。主演ふたりは好演。いつも笑っている次女の娘さんが妙に印象的。あと、沖縄の小学校の良心的な描写がいい。少人数教育はすごい贅沢であり、地方は都心からのUターンを望むなら、こういう学校をぽんぽん閉鎖すべきでないのに、といつも思う。
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