コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] インベージョン(2007/米)

「感染者は感情を表に出さない」、「非感染が知られたら襲われる」。この二つのルールによる心理戦は、『SF ボディ・スナッチャー』よりは描かれているが、まだ物足りない。眼前で何が起ころうと無反応を貫けるか、という感情的、倫理的ドラマも不足。
煽尼采

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







他者性の喪失した、生存本能のみによる平和と、人間性の残った、争いのある社会の対比もいま一つ。もう少し考えさせられる内容を含んでいれば良かったのだが、感染を「インフルエンザ」と発表する米国政府と、疫病への対応を行なう欧州、日本との対比に、自国への不信が感じ取れたのみ。

外交官達の会食シーンで交わされる会話のような気の利いた台詞がもっと欲しい。この場面でロシアの外交官が言う、「私に、アメリカ人と同じ目でイラクやダルフールの惨状を見られる薬をくれないか」という台詞は、感染による他者性の喪失による平和、という後の展開に繋がってくる。だが、理解し合う難しさを抱えた社会と、理解すべき他者性が元より存在しない社会との対比がまるで描かれていないので、政治的要素を加えても全く活きてこない。

フラッシュ・フォワードの使用によって、間(ま)を作らず常に緊迫感を維持しているのは良いのだけど、全体的に見てやや緩急に欠ける気がしなくもない。細かいカット割りや、時間軸の交錯だけでは、小手先の編集テクニックの域を出ない。

ボンネットから炎を上げながらのカーチェイスなどの派手な映像などより、序盤の記者会見場での、給仕達が折り目正しい動作でコーヒーポットにゲロする場面のようなアイデアをもっと出す方が良かっただろう。状況の異常さ、不気味さの演出では、まだ工夫の余地がありそうに感じた。

CGも、どこか大雑把。絵心が無いとは言わないが、絵心がマンガチックだとは言いたくなる。ただ、エンドロールの導入部での、異世界体験型のCGは愉しい。ミクロの世界の隙間を縫うように、アルファベットが浮遊するシュールさ。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。