[コメント] タロットカード殺人事件(2006/英=米)
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すっかりアメリカで映画を作ることを諦めたのか、ウッディ・アレンはスカーレット・ヨハンソンを連れだってイギリスへ移動しました。前作『マッチポイント』もそうですが、イギリスという都市の現代に付き添ってじっくりシニカルに映画を撮っていますね。素晴らしいですね。
今さらウッディ・アレンの経歴や実績を語っても意味が全くないので、この作品のことだけコメントしますが、まぁ相変わらず自由に伸び伸び演出されていて、自らも楽しく演じていらっしゃいますね。すごいと思います。
お話は殺人事件を追いかける駆け出しの女性記者(スカーレット・ヨハンソン)と彼女に付き添う老いぼれ手品師(ウッディ・アレン)のお話です。ここまで書けば、お話の内容がどうであれ、もうワクワク、楽しくてしょうがないような感じですが、ここでもう一人大物登場です。
ヒュー・ジャックマンですね。
昨年(2008年)のアカデミー賞で司会をつとめるなど、芸達者です。私はこの人を次の『007』にすればよいと思っていますが、『Xメン』などのワイルドな役よりも、このように品のある貴族の役も十分こなせるんですね。素晴らしい演技だったと思います。
話がどんどん横道にそれてゆきますが、スカーレット・ヨハンソンはいいですね。『ロスト・イン・トランスレーション』で日本に観光に来た女性を演じていましたが、とても良かった。前作『マッチポイント』の感情的な演技も良かった。そして本作のようなコメディもこなせるんですね。素晴らしいです。そして何と『モンタナの風に抱かれて』の娘役だったんですね。今気がつきました。あの馬に乗るのが怖くて、恐怖症になってしまうお嬢さん役ですね。そうだったのか!気づきませんでした。
さて本題に戻りますが、この映画ではイギリスの貴族の営みが良く映し出されています。そしてイギリスという国が階級の国であることも明確に示されています。階級社会であるからこそ、この映画で殺人を犯してしまう貴族(ヒュー・ジャックマン)のような逆説的な悩みもあるのですね。
この皮肉なっぷりのイギリス社会で、おおらかでのんびりしたアメリカ人二人に事件を暴露されてしまうあたりが、本当に皮肉ですよね。
そして結局ウッディ・アレンもスカーレット・ヨハンソンを救出に向かう途中に交通事故で死亡。あの世でも下手なマジックをするあたりが彼らしいですね。
あの世でベールを被った人物が一瞬映りますね。これが誰だか全く解説されません。このあたりもウッディ・アレンらしさですね。前作『マッチポイント』でも指輪が飛んで川の向こうに落ちるか手前に落ちるかという瀬戸際です。
本作でも貴族というか上流社会で起きている見えない部分を優しくシニカルに指摘しているようで、とても面白かったですね。
2009/05/05
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