[コメント] ジャイアンツ(1956/米)
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エドナ=ヴァーバーによる原作の映画化で、20有余年に渡る激動期のアメリカの家族を描く大作。ただ本作の場合有名なのはそっちではなく、“ジェームズ=ディーンの遺作”として。生涯たった三作の映画しか出演せず、華々しく逝ったディーン。そのイメージは死んだからこそ、ますます高まっている(生きていたら今世紀を代表する大スターになっていたかも知れないし、あるいはモンゴメリー=クリフトの二の舞になってたかも知れないが、それは誰にも分からない)。
内容はアメリカにおける価値観の変転を静かなタッチで描く作品で、かつて栄えた大規模農場(安い賃金でメキシコ人を使い数千頭の牛を広大な牧場で飼っていた)の第一次産業華やかりし時代から、石油を用いた工業の時代へ、そしてサービスの時代へと変わっていく。祖父の代からカウボーイとしてタフな生き方をしてきたディックは、結局「時代遅れな人間」とされてしまい(家族を守ろうという不屈の精神は最後まで輝き続けるが)、石油を掘り当てて時代の寵児となったかつての牧童ジェットに膝を屈することになる。更に時代に飲まれたこども達はみんなディックとレズリーの元から去っていく。そんな時代の流れを淡々と描いている所なんかはなかなか良い出来。
映画評を見ると絶賛される事が多い本作なんだが、私にはなんか合わない作品だった。ストーリーそのものは悪いとは思わないけど、ディーンの存在がとにかく邪魔。本来だったら重要な役所だからこそ、もうちょっと演技に幅のある人間を連れてきた方が良かったと思うぞ(本来アラン=ラッドがこの役を演るそうだったから、そっちの方が良かったんじゃないかな?)。前半は甘ったれた小僧ぶりを隠そうともしないし、後半の老けメイクは全然似合わない(いくら髭つけて皺作っても、物腰が年寄り臭く見えない)。もうちょっとふてぶてしさや嫌味さを演技出来る人間だったらまだ良かったのにねえ。それに『エデンの東』(1955)や『理由なき反抗』(1955)同様、「俺に愛をくれよ!」的な演出はどうにも合わない。
ディーンは自分の出演シーンの撮影終了直後に交通事故に遭い、作品を観ることなく死亡。異例なことだが、故人でありながらアカデミー主演男優賞にノミネートされる(事故については『クラッシュ』(1996)で結構細かく語られてるので、興味ある人は一見をお薦めする)。これによりディーンは伝説の人間となり、本作も彼の作品として語られるようになった。
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