[コメント] 真・女立喰師列伝(2007/日)
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押井守が創り出した架空の裏歴史『立喰師列伝』のスピンオフというか、続編的作品。5人の監督による6本のオムニバス短編映画。こういう仮想歴史は私は大好きだし、何せあの押井守監督作品。当然劇場に向かう。
流石にツレの人間はげんなりしていたようだが、私にはこれ充分OK!いや、こういうのって良いじゃない。まあ、確かにオムニバス作品だけに出来の善し悪しはあるけど、どれも「立喰師」というキーワードで括られるものばかり。全員本気で押井の悪ふざけにどっぷり漬かってやろう!という立場や良し。
出来を一つ一つ検証していけば、映画として成り立っているのは4話の湯浅弘章作品くらいで、後はテレビレベルか、それ以下のものばかり。肝心の押井作品は1話は完全に自分の作風を捨て去り、先日亡くなった実装時昭雄監督っぽいものになってしまった。押井監督自身実装時監督のファンで、特に「ウルトラセブン」が好きというので、アンヌ隊員役のひし美ゆり子を得て、敢えてそれっぽく作ったのだろう。いつの間にか押井監督も起用になったもんだけど、画面そのものがまさに実相寺だから、ちょっとやりすぎの感はあり。最終6話は押井監督が前に作ろうとしていた『G.R.M』という作品の一エピソードと言った雰囲気。ある意味では両方パロディ的作品になってしまった…とはいえ、こう言うのもありなんじゃない?力を入れずに作っているのが、かえって新鮮。
ところで“押井守らしさ”と言うことを考えてみると、本作では押井守のこれまでの“押井守らしさ”というのが思い切り後退しているのが最も印象深い点だろう。前々作である『イノセンス』でも感じられたのだが、押井は明らかにこれまでの記号的キャラから血肉を持った人間を描こうとシフトしている。押井は変わって欲しくないというファン的立場から見るならば、それは我々に対する裏切りであり、私の「見たい」と思っている押井作品ではない。とは言える。しかし、これは実際はこれまでの押井作品で裏切られ続けてきた我々にとっては既知の出来事。その度毎に新しい驚きと場合によっては大きな失望。それらを受け入れることに馴れてしまった身には、これも充分。おそらく現時点で押井が得たものがここには投入されているのではなかろうか?
まあ、そんなこんなで本気の次回作を楽しみに(これは逃げか?)。
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