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[コメント] エンジェル(2007/英=仏=ベルギー)

8人の女たち』と同様、一般受けしそうな今回のフランソワ・オゾン作品。オーソドックスな恋愛物語だが、色彩美や過剰な演出の中、ところどころ巧さも感じさせ、オゾンらしさは失せていない。(2007.12.16.)
Keita

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結構オーソドックスなラブストーリーである。だが、ところどころ変わっているし、ところどころ巧い。フランソワ・オゾンはまたひとつ違ったタイプの映画を成功させた。尖がった監督のようで、職人肌な監督でもある。

オゾンにとってはじめての全編英語での作品は、フランス映画的な部分は少なく、役者たちがしゃべる英語のアクセント同様、イギリス的な雰囲気を重視した印象。だが、イギリス映画とも少し違う。そこがひとつの味でもある気がする。

演出はいい意味で過剰なのである。過剰な色彩、過剰な感情の起伏、過剰な場面設定。これによって、ファンタジックな雰囲気が生まれる。オゾンの作品だと、『8人の女たち』に近しい雰囲気かもしれない。ここのところ、『ぼくを葬る』などかなりパーソナルな映画を撮っていたことを思うと、こういった幻想的な雰囲気は観客の受けもいいように思える。

そんなファンタジックで華麗な雰囲気は際立つ中、人間を描くところは怠らない。主人公のわがままで奔放な女性作家を絶対に嫌いにさせない。尖がった感情を示した後に、寂しさを感じさせるため泣くシーンを入れていたり。序盤から、しっかり締めるところは締めている印象を得た。だからこそ、終盤の落ちていった主人公を見ても、見続けることができた。孤独な女性の話として、きちんとまとまっていた。

もちろん作品の質や女優の格として及ばないのだが、トリュフォーの『アデルの恋の物語』と似た印象を得た。オゾンはまた1本、秀作を残してくれた。

(評価:★4)

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