[コメント] 白鯨(1956/米)
ボギー出演作以外に見るべき作品を残さなかった監督という位置づけが私のジョン・ヒューストン観で、本作もその見方を裏切らない。
人物の行動をそれこそ動態として示す行為が動く写真としての映画なのだが、彼の映画はある静態モデルの解説を見せられるような退屈さを感じさせられることが多い。
本作で最も非映画的な登場人物がエイハブ船長で、主役の人選も含めて完全に演出を間違えているとしか感じられない。美術やメーク、とりわけ主要舞台である船の造形がよいので残念だ。力瘤が入りすぎて身動きが取れなくなったフィギュアスケートを見ているようで、ジャンプシーンに相当する見せ場部分がことごとく駄目である。
彼の作風の対極が、おそらくフリッツ・ラングである。力の抜きどころを心得ている。ときには物足りなさを感じるほどに。下品な言い方だが、ラングは、観客が放置プレイを大好きであることをよくご存知である。(登場人物の放置、観客の放置、いずれも含む) ヒューストンは思うに紳士的過ぎる。またおせっかいすぎる。
『ハイ・シエラ』、『ヨーク軍曹』いずれも私の大好きな作品でアメリカ映画の最高峰の一角を形作っている。これらの脚本がヒューストンである。彼は、監督業に転身せずにそのまま脚本家として活動したほうが後代にもっと高い名を成したのではないか。
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