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[コメント] ハナ肇の一発大冒険(1968/日)

波乱万丈のドタバタを駆動させるのはこれ全てハナ肇の小心な下心
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







松竹悲恋劇のパロディだがパロディに留まらなかった。冴えない中年男の白日夢が生理の襞を丁寧に描写している。ズルズルとついて行き、別れが中断される度に幸福がもたらされるが、押し倒す訳ではない。薄幸の好青年入川保則など、ただハナの嫉妬のためだけに登場する。殺されたら半分ホッとするというブラックな心情は顰蹙ものだから、観る人を選ぶ映画ではあるだろう。雪山を橇で超える件、これもパターンだけど、マジでロケしていて、もうパロディがパロディでなくなっている。この辺りの白熱度もとてもいい。

倍賞千恵子野村昭子の対照が効いている。収束の埠頭、ハナにキスする真知子巻の倍賞の、軽く一線を超えたニュアンスが美しい(白日夢だろう)。がさつな野村の父ちゃん父ちゃんと連呼する声の存在感もいい。正直者のハナの賛美もまた暖かでいいと思った(ラストの倍賞美津子の登場でその感慨は揶揄われるのだけど)。

007並の突飛さだが、リアルタイムの邦画では稀なことに、本作はアフリカの独立運動の映画である。旅行会社のパネルでもそれとなく示されている(モンド映画系なのがマヌケだが)。石井均の怪演が記録されているのも嬉しく、破天荒な笑顔がすごい。

(評価:★4)

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