1960年代のハーレムやブルックリンの雰囲気が臭いと共に再現されているのは素晴らしい。麻薬による腐敗臭が感じられ、映像の力強さは近年の映画でも群を抜く。

でも肝心の物語に特徴がないので困ったものだ。1シーン1シーン名作の香りがするのに、サスペンスは生まれそうで生まれない。そんな生殺し感が長く続くので、ここが評価の分かれどころかもしれない。企画段階では、おそらくラストの『元刑事が法律家に転職したら、最初の依頼者が自分が捕まえた麻薬王でした』って史実を映画化しよう！となったのだろうが、その過程を描く上で特に面白い物語がなく、でもいい題材だから映画化しちゃいましたってもんだろう。

映像やキャスティング、俳優陣演技も素晴らしい要素が多かったのに、その醍醐味をも崩しかねないストーリーの弱さ。印象に残るシーンの連続で映画的な満足感は十分だったけど、リドリーがメガホンとってなかったら平均点3.0くらいになってそうな、ギリギリchopな作品でした。