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[コメント] テラビシアにかける橋(2007/米)

魂をもぎとられるほどの悲しみであってしまったとき、人はどのようにしたらいいのだろうか?児童文学の名作の映画化ということで配給会社は明らかに宣伝を間違ったのだろう。たいした話題にならずに消えていきそうなだけに残念。大人こそ見るべき傑作。
paburo57

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この映画の予告編を見ただけでは 児童文学の映画化でああ、きっとファンタジーなんだなと勝手に納得していた。 これは明らかに配給側のミスであった。 この映画の内容は深く秀作、名作、傑作の部類に入る映画であるからだ。

4人姉妹の仲の一人の男の子。 小学校高学年ぐらい。 家が貧しく愛情深いが日々の生活に忙しく追われる両親。 その貧しさゆえに学校ではいじめられる少年。 そこに、転校生の女の子がやってくる。 二人は家が近いために次第に仲良くなり そして、森に壊れたツリーハウスを見つけ 創作が好きな彼女にいざなわれるように 二人だけの創造の世界を作り出していく。 二人は互いにとってかけがえのない存在になっていく。 しかし、彼女が突然死ぬことにより 彼は深い悲しみに突き落とされる。 人間が本当に悲しい事態に見舞われたときにどうなっていくのか。 その事態を認識することが出来ず 感覚が麻痺していき 魂の一部分が死んでしまう。 彼は何も語らない でも、日常生活は自動的に過ぎ 身体も自動的に動いていく日常。 でも、彼女はやっぱりいない。

そんな人間の持つ、悲しむという一つの力は きっと、誰にも備わっているのかもしれないが 彼のように、魂のそこから悲しむことが誰にも出来ることなのだろうか? そんな思いとともに、観ていて深い悲しみに捉えられる。 お涙頂戴の場面ではなく 深く深く深く悲しみは腹のそこにしみわたってしまう。

原作は読んでいないが この映画は一つの映画として完結している。 大人も子どももなく 魂の一部をもぎ取られるような悲しみに襲われたとき ここまで深く傷つき悲しむことがあるのだ。 深く深く深く悲しいのだ。 しかし、その悲しみもまた 乗り越えるすべはあるのだ。

児童文学の映画化ではあるが 子どもよりもむしろ大人が見るべき映画で 大人の方がその悲しみは深いだろう。 傑作である。

配給会社のミスにより この映画があまり話題になってないようだ。 残念としか言いようがない。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)中世・日根野荘園[*]

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