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[コメント] 三人の博徒(1967/日)

昭和初期のマカオの描写に興味があったのだが穿ったものはなくほとんどがセット。ロケも大急ぎで撮ったのがよく判るが、鶴田が着流しで街頭歩むシュールな姿は見処。砲台のオープニングには何が篭められたのだろうか、
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







任侠映画だが組織対組織ではなく組織対個人の復讐劇。親分の安部徹は中国人のチョーさん小松方正と金もうけ。中国から阿片入れて日本から売春婦をマカオへ送る交易。この話はリアルかどうか、突っ込んでも仕方ないのだろう。

安部の組の客人で一宿一飯の恩義により網走行った鶴田浩二の妻東龍子(彼女の任侠映画らしい脆弱が際立っているが、いつも通りの感否めず)は、安部から小松へ妾として提供され、小松は売笑婦に再利用。東とのベッドに鶴田乱入を受け大慌ての小松はいつも通りコミカルで笑わせてくれる。

一方、中国人車夫(片親が日本人という設定)でマカオの侠客を名乗り沓掛時次郎の真似する遠藤辰雄のやたらな日本贔屓はくすぐったく、戦前に親日派がいたんだよと強弁する保守派の論法の具象化のようだ。

マカオにはマカオ日本人会本部という組織が看板出しており、河野秋武ら任侠映画では滅多に見られないような真人間が看板守っている。女郎屋経営する安部は日本人の面汚しで彼等を追い出すための組織だと語る。終盤、河野は安部との決闘に行く鶴田の子供を養子として引き取りまでしている。物語のための便利な人物にしか見えないが、さて本当にそんな風紀委員みたいな善人がいたのだろうか。それとも物語上の理想的な人物だろうか。

その安部の小泉商会マカオ出張所は日本での食い詰め物を養っており、奥の部屋で大勢がゴロゴロしているのがすごい。逮捕されるから日本にいられず海外でいざというときにためにキープしておく、というのがリアルだ。任侠にはこういう世界もあったのだろうか。この一人、結核の池辺良の造型が抜群で本作はこれが一番印象に残る。

終盤は類型的。鶴田が街頭で出会った子供が自分の息子だったというメロドラマ的偶然は、それが血縁、運命だと説明されるだろう。鶴田は池辺を失いつつ、洋館の対決でマシンガンをぶっぱなして安部一味を殲滅。扉越しに安部を銃殺するショットがいい。「日本人の面汚しめ」と吐き捨てて池辺担いで去り、映画は終わるのだった。

(評価:★3)

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