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[コメント] 魔法にかけられて(2007/米)

アニメの国から現実へ、というアイデアの出来を一応確認するつもりで観たが、意外にツボだった。アニメと現実とが、互いに世界観をブチ壊し合いながらも次第に互いを肯定していく過程が感動的。NYの、現実と幻想を同程度に成立させ得る懐の深さにも感心。
煽尼采

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ディズニーのオープニングロゴのお城にそのまま突入していく所から既に、その入れ子構造的な面白さが始まっている。この作品には、夢、夢、夢のディズニーが、現実と真っ正面から向かい合う事でファンタジーの存在価値をあらためて肯定するという、かなりの気概が感じられる。

お姫様のジゼルがロバート親子の家を掃除する為に歌で生き物たちを集合させるシーンは、‘自然’が不潔なものとしてしか存在し得ない現実の都会の悲惨が如実に表れていて、ファンタジーと現実の齟齬が目に見える形でぞろぞろと湧いてきた観がある(リスのピップにレストランが大騒ぎになるのも同様)。特に、ゴキの群れ(!)は、見た後しばらく引きずってしまうくらいだが、こうした最恐レベルの画を見せられたからこそ、後のファンタジーと現実の融和の仕方に胸を打たれるのだろう。

王子のエドワードも、押しつけがましい爽やか笑顔を振りまき剣を振り回す鬱陶しい男として暴れまわりながらも、いつしかその率直な愛の表現の健やかさも感じられるように。仮にアニメが偽善的な嘘ばかりの世界なのだとしても、それを作ったのは現実の人間。となればそこには当然、現実の人間の夢や憧れが投影されている。その事を、シニカルな態度に自乗自縛にならないで素直に認める気にさせてくれる点が、この映画の唯一無二にして最大の素晴らしさ。

アニメと現実をつなぐ中間領域、媒介としてのCG。冒頭のアニメがとても愛らしく、トロールのヨダレや鼻水さえ不潔感が殆ど無いのに比べ、現実に移ればあのピップさえいまいち可愛くない。むしろ若干ブサイクなCGピップの頑張りぶりが却って微笑ましい。

(評価:★4)

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