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[コメント] レンブラントの夜警(2007/英=カナダ=ポーランド=オランダ=仏=独)

グリーナウェイ、本当に久しぶりの作品。そしてテーマは、絵画と映画とは何か?
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**ネタバレ注意**
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尊敬しているレンブラントの絵画を題材にしているせいか、いつものエログロ度が影を潜めている。奔放なアナーキーさが後退し、繊細な絵画の粒子を気にしているような演出振り。相変わらず、とどまるところを知らない勝手な台詞が画面を飛び交うが、抑制力は持っている。ほとんど台詞で物語を語らせようとする展開にかなり驚いたが、それは舞台としての演出を意識してのものだろう。

そうまさに、この映画は舞台劇なのだ。そして、レンブラントを敬愛して堪らないグリーナウェイの映像としての色彩は見事レンブラント色だ。光と影のコントラスト。登場人物の多さ。グリーナウェイは映像でレンブラントを再生しようとしているように僕には思える。

だから、「夜警」の謎に迫るということはグリーナウェイには超本気かもしれないが、僕たち観客はグリーナウェイのレンブラントへの耽溺ぶりを見ておけばいいのだ。

映像、そして今回は冒頭での音響の凄さ、映像を通して人間の中身に入り込む、といったレンブラントと同じ取り組みはこの作品を通して十分堪能し得た。 古今の名作を取り上げるについてはあの豪放なグリーナウェイでも、一応の礼儀は尽くしたということでしょうか、、。

でも、今までのグリーナウェイワールドからすれば、映像が緻密に計算されている分、破綻への美学も薄まっているのは事実であろう。美しいが、はみ出た人間洞察力を感じるまでには至らなかった。だが、久々の新作に大人の配慮も見え、僕にはまだまだ超魅力的な作家だと思う。力作である。

(評価:★4)

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