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[コメント] うた魂♪(2008/日)

単なる思い込みかもしれないけど「後付け演出」みたいなものを感じた。ベテランのスタッフ達が「素人な脚本だけどなんとか見せられる形にしてやろうぜ」という様な・・・結果的にそれは成功しているかもしれないけど、もっと素のままでも面白かったのではと思う。
YO--CHAN

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







個人的には、本作で印象に残ったのは浜辺で歌うシーンだけだ。ヘッドホンをつけたまま、何かとてつもない勘違いをしながら、自己陶酔して歌うシーンは妙な迫力があった。(石坂啓の短編漫画で似たのがあった様な)

それ以降が、何か続いていない気がする。

いい意味でも悪い意味でも、冒頭の味と違う気がする。自分は、あんなとってつけた様な小ネタでもそれなりに好きだけど、それは脚本が目指したものではないだろう?

オリジナルの脚本には、「そこで少年がマトリックスみたいにスローモーションで飛んできて彼女に(略)」とか「(突然声色を変えて)合唱をなめてんじゃ(略)」とか書いてあったんだろうか? もしかしてこれは、もっと面白い作品にしようと後から付け加えられた部分ではないのか。

妄想がどんどん続くが、オリジナルの脚本は、もっと気の抜けたコーラの様な、例えば文化祭の準備で徹夜明けにポケーっとしながら彼女と帰る様な、そんな所ばかりに重点を置いた、ある意味もっとひどいものだったのではないだろうか。ならそれも見たい(笑)

本作のストーリーも、どこか「細い(?)」気がする。演出や俳優の力や歌の力、夏服の力で引っ張っていってくれるけど、ストーリーそのものは、例えば学校の映画鑑賞会や雨で野球が中止になって放映された「ブリキの勲章」や「片腕のエース」みたいな類型的なものを感じる。脚本家が訴えたかったのは、こういうものだったのだろうか。

もっとも、仮にこのストーリーも映画という体裁をつけるための既製服みたいなものだったとして(さすがにそれはないだろうが)、そんな演出・ストーリー抜きで、そもそも「映画」になるのかと言われると自信はない。VHSのビデオデッキだって山の様な補正回路を経て、鮮明な画像を提供する事ができるのだ。ただ、ひょっとするとこの脚本家の頭の中には、例えば「ビューティフル・ドリーマー」で逆さ風鈴の水溜りを歩くシーンの様なエッセンスがあったのではと勝手に思っている。それに(これを言うと身も蓋もないけど)本作の様な演出の作品って割と他にもあるからなあとか・・・ひどい。

雑談だけど、オリジナル脚本の題は「あたしが産卵する日」というらしい。面白い題名だと思う。さすがにこれで全国公開は無理だとしても。もちろん映画は脚本だけじゃない、俳優の力も、演出も、撮影もある。ただ、これがなぜ「うた魂」にと思うと、例えば、学校の先生が、生徒の未熟な絵を勝手に手直ししてよかったね、という様な想いを抱いてしまうのだ。もっとも、そんな事を思ってしまった事自体がこの映画の力なのかもしれないが・・・偉そうな事書いてしまいました、ごめんなさい。

(評価:★3)

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