[コメント] 王妃の紋章(2006/香港=中国)
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中国映画空前の製作費を用いた、チャン・イーモウ監督の最新作(噂によれば50億円だそうだ)。既に国際的な監督でもあるイーモウ監督は元々撮影畑の出身で、画面を美しく作り上げることには定評のあり、2008年の中国オリンピックでも開会式の総合プロデューサも務めるとあるので、その前に巨額を使った中国の映画を作ってみたいというのがあったのだろう。中国政府の大々的な後押しがない限りはこんな作品は絶対作れない。
とにかく映画を彩る美しさや豪華さについては凄いものがあり、ほとんどの画面に金色がふんだんに使われ、ここまでぴかぴかした映画は先例がないほど。宮中だけでなく、王の兵士もそれぞれに独特の色遣いが行き渡っており、それらがワイヤーアクションで乱れ飛ぶ姿は、流石イーモウ監督。と言ったところ。それらがCGだけでなく人海戦術でなされるのも中国ならでは。一体何人くらいキャストがいるんだ?女性も見所の一つだね。どこかは言うまでもないけど(笑)。
しかも政府の後援を受けていながら、敢えて挑戦的な設定を使っているのも特徴。元より儒教の国だから、家庭内不和はあまり好まれる素材でないはずなのだが、敢えて肉親同士の殺し合いや、近親相姦ネタまで持ってきたのは監督の大きな挑戦だったと思われる。
ただ、画面の凄まじさはともかくとして、やってる内容があまりにもなさすぎ。要するに家庭内不和を内に抱えながら悶々としている家族が最後に爆発する。という内容で、石井聰亙監督の『逆噴射家族』となんら変わりがない。普通の家庭の場合家庭内暴力で済んでしまう話が、王族になると周囲に甚大な被害を与えてしまう。これらは基本的に平和に話し合うことが出来れば回避出来たことなのかもしれんのだが、それさえ出来なくなってしまうとこうなってしまうという例だろう。家庭が壊れる作品というのがどうにも苦手な身としては居心地悪いことおびただしい。監督が作ってみたい題材を押し通したのか?
画面の凄まじさに圧倒されるだけでも観た価値があると思うので、大画面で観て損はない作品だろう。
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