[コメント] 暗殺者の家(1934/英)
『知りすぎていた男』よりもタイトな仕上がりであるのは上映時間の長短を考えれば当然だが、筆致にも違いが。こちらはかなりドライ。ノヴァ・ピルビームは利発そうで可愛い好ましい。ヒッチコックは『第3逃亡者』に続く三作目のピルビーム出演作を構想していたらしいが、実現には至らなかったようで残念だ。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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「音」の演出について。アルバート・ホールのシーンやピーター・ローレらがそれを「ラジオ」で聴くシーンなど、「音」をキイとして印象的に仕立てた映画だが、それは裏を返せば無駄な音が使われていないということだ。現実音以外の音は全篇を通じていっさいなかったかもしれない。要確認。
「暴力」の演出について。その多くが犯罪の絡んだものであるヒッチコックの映画は当然暴力が頻出するものでもあるのだが、その中でも『暗殺者の家』は暴力の表出したシーンがとりわけ多い作品のように見える。中でもラスト・シークェンスの長い銃撃戦はどうだろう。銃声の響く回数はヒッチコック作品で最多である、と怪しい記憶に基づいて云ってみよう(『バルカン超特急』はどうだったかしら?)。また、その簡潔で乾いた銃撃の音響。人は異様なほどのあっけなさで命を落とし、暗殺団も警官隊も死屍累々となる。「シドニー街銃撃戦」と呼ばれる実際の事件に想を得たシーンなのだそうだが、これは間違いなくヒッチコックの暴力演出のひとつの突出点を形成している。一方、歯科医との取っ組み合いや教会での椅子の投げ合いは滑稽さに裏打ちされた、これもまた一種の過剰な暴力であり、ヒッチコック流暴力演出を堪能できる。
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