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[コメント] 大いなる陰謀(2007/米)

“自称”リベラリストには“痛い”作品です。本作の狙いはそこにこそあったんじゃないでしょうか?
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 物語はTVドラマ『24』よろしく、1時間弱で起こった出来事を三つの視点から眺めていくという作品。

 とてもとんがった作品で、娯楽性は一切考えず、現在のアメリカが置かれている状況の説明と、起こってしまった戦争をこれからどうすべきか。と言うことに主軸を置いた物語になっている。

 そのお陰で物語性はとても低く、ほとんどが会話と言うよりも説明口調の台詞ばかり。決して楽しいとは言えないし、ましてやアメリカから離れた国ではリアリティも感じられないという問題があり。言ってしまえば頭でっかちのリベラリストが書いた脚本って感じ。タカ派の理論も一応筋が通ったものとなっているため、安易な戦争批判だけの作品でない事だけが救いの作品。

 …と言ってしまうと、それで終わりだし、結論として「でも流石名優3人だけあり、演技はたいしたもの」と無難にまとめてしまいたくもある…のだが、ちょっとだけ愚痴を言わせて欲しい。

 私は大学以降一貫して自分ではリベラリストだと思っている。だけど気がつく、といつの間にやら「そう思ってるだけ」の存在になってしまっているという事実。なるだけそれを見ないようにしているのに、物語の一つ一つがちくちくと心を刺す。「平和平和」と口で言いつつ、机の前から全然動いてない自分自身に自己嫌悪を覚えつつも、同時に自分自身の中にこんな“青さ”があることをちょっと誇りに思えていることも事実。

 確かにこの作品は出来としてはあまり良くないのだが、逆にその甘さのお陰で、私自身が自分の問題として受け取ってしまった事が重要な点。

 あるいは本作はそのためにこそ作られたのかもしれないな。アメリカにはかなりの数のリベラリストがいるし、その中には本気で本作を受け止める人もいるかもしれないし。  とんがり具合が丁度ストライクな作品だった。

(評価:★4)

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