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[コメント] 少林少女(2008/日)

少林サッカー』は「ありえない展開」の連続。対するこっちは「ありえない脚本」の連続!!
ほしけん

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「これはお金を払って観たら損をする」と悟ったので地上波でタダで観たら、まさかの「時間すらもったいない」と思ってしまう内容でした、ほんと恐るべし!!

少林サッカー』は後に残らない映画でした。これは悪い意味ではなく、心残りなどないほど期待以上の展開を見せたうえ、密かに撒いた伏線も最後で残さず華麗に拾ってしまったという意味です。この残らなさが、観た後のなんともいえない心地よさを与えてくれます。

こっちはというと、とにかく後に残ります。それは (1) つぎはぎだらけで破綻した脚本 (2) 夢オチにも劣るクライマックス (3) あちこちに放置されたまま拾われなかった伏線らしきもの、に対するもやもや感。もう勘弁してほしいもんです。

所々ある取って付けたようなギャグもひどい。全然笑えない。少林サッカーのあの二人に卵という最高の素材を使ったシーンですら、元ネタのクオリティとのあまりの落差にもうスタッフたちの実力の限界を感じざるを得ませんでした。

CGもひどい。ラクロスのボールがありえない急カーブの軌道をやたらと描くし、チャーハンはお米に見えなくてただの粒々だし、岡村が高いところから落下して跳ね返る軌道なんざ、まるで新人研修ではじめて作ったかのようなぎこちない動き。あらゆるCGに対して違和感しかぬぐえません。

もっともひどいのがやはり脚本です。ラクロスである理由、リンが少林拳をやたらと勧める理由、リンは単にノーコンなせいで負けたのに「チームワークが無い」と言われてチームから干される理由、その後部員たちが仲直りする理由、これら全てが適当でよくわからない点はもちろん。「少林拳? なにそれだっさーい」レベルの一般人だった部員たちが、作品中の時間でわずか1分半の間に少林ラクロスをマスターしてしまうのに閉口。リンの3000日の修行はなんだったの? こんな素質ありまくりの超人たちは少林サッカーですら登場しません。ここまで矛盾させておいてエンドロールまでほかの部員にまったく活躍の場が用意されないのもすごい。

そもそも、少林サッカーでは「この脚力はサッカーに応用できる!」という発想が重要となるわけですし、蹴ったボールが燃えるまでの過程すら丁寧に描かれています。こっちは安易にラクロスの球を燃やしたりしてるうえに、なんで少林拳をやってるとそうなるのか、という理由付けが作中で全く行われてません。ラケットの振り方はゆっくりなのに、振り上げた5倍のスピードで不自然に球が飛んだりするし。完全に少林サッカーが作り上げた設定ありきで、あまりにもお粗末です。そのくせに「サッカーでこき使われるのはもうごめんだ」なんてセリフがあるのが妙に腹立たしい。

後半にある道場が燃やされる一応重要なシーンでは、ラクロス部員と一緒に道場を建て直したり稽古をしたりの回想シーンが流れます。しかしこれらは全てたった10分前の適当な仲直りシーンであったばかりの出来事。あまりにも安っぽい。安っぽすぎる。道場を燃やすシーンのために無理矢理彼女たちを仲直りさせたのかと思うほど。しかも、道場はごうごうに燃えているのに火を消さすに江口洋介と一緒に棒立ちで会話しながら火を眺めている始末。おまえら火消せよと。

後半のアクションシーンは緊張感のない雑多なシーンのオンパレードで、少林サッカーのようなシリアスなシーンですら定期的な笑いを忘れない精神もまったくなく、輪にかけて退屈です。この部分の話はまったくつながっておらず、作中でリンが学んだ「チームプレイ」も活かされず、ラクロスという設定が活かされた部分はバケツとぞうきんを投げるシーンだけ(しかも、練習試合中はあんなにノーコンだったのに! ノーコンを矯正する描写は特に描かれていません)。

ひどいところ満載のこの脚本のなかでも、飛び抜けてひどいのが前述した「抱きついただけで改心」のクライマックスの展開。いくら「私は戦わない」と言ってたとはいえ、直前まで生身で戦ってたうえに、ここで流れるフラッシュバックは何の伏線でもないので、説得力が皆無です。ここで初めて明かされる「学長がリンの幼なじみ」という設定? (ここは説明が足りなすぎて確証が持てない。子供の精神に戻っただけなのかも) にもしかして伏線があったのかと探してみたけど、ほんとに何処にもありませんでした。もしかして江口洋介が昔の写真を眺めているシーンがそれ? そんなばかな。ケータイ小説ですらこんなアクロバティックに取って付けた展開は存在しないはず。

そしてミンミンを救ったのに、変わったことといえば、殺人犯で放火犯で誘拐犯のはずの学長がなぜか何のお咎めもナシにラクロスの応援席についたことだけ。それ以外はチーム仲直り直後と何ら変わりありません。救出劇に30分も時間を割いたのはなんだったんだ!? このシーンまるまるなくてもよかったんじゃないの?

題材に対する愛なんてかけらも感じないどころか、馬鹿にしてますよね。出演者の格好だけでまったくスポーツを表現できていないラクロスのシーンといい、クスリとも笑えなかったブルー・スリーもどきの人物のシーンといい。特に後者はファン一人一人に殴られてもいい、いや殴られるべきですね。

数少ない良かった点は (1) オープニングのアニメーション (2) 柴咲コウの演技 (3) ここだけなぜかクオリティが違う柴咲コウvs岡村のアクションシーン (4) エンドロールでボールが地中に潜ってキーパーが地面にラケットをザクっと突き刺して止めようとするシーン。あとは満遍なくダメダメです。

(評価:★1)

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