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[コメント] 譜めくりの女(2006/仏)

美しいものには棘がある、しかも見えない棘だから余計にタチが悪い。
k-jam

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「そんな事でここまで復讐するか?」と思う人が多いと思いますが、逆に「そんな事でもずっと根に持っている人もいる」ということだと思います。

終始無表情のメラニー。何を考えているのか全く読めない彼女がプールで潜水のタイムを計る息子に音もなく近づいていく時、アリアーヌの大切な演奏中 隣で譜めくりをしている時、「こいつ!何かやるんじゃないか?!」 とドキドキしました。 でも、メラニーの復讐計画はそんな単純ではありませんでした。

アリアーヌにも、息子にも、気付かぬうちに身も心も滅ぼす程の復讐。 見終わった後、背筋がゾクっとしました。 こんなにも冷たい、恨みの仕返しが存在するのかと思うと、本当に怖くなりました(フィクションですけど笑)。

特にアリアーヌへの仕掛けは絶妙でした。愛してしまうほど信頼させておきながら、それは全て計画、当の本人は最後の最後まで気が付かない。きっとアリアーヌは「なぜこんな事(復讐)をされたのか」一生分からないままでしょう。

淡々とした、あまり会話のない、フランス映画らしい心理ドラマでした。 出演者、映像、色、音楽、テンポ、何もかもがピッタリはまっていて最高です。

忘れがちですが、主人公メラニーは肉屋の娘です。ピアノを弾く幼い手元と、巨大な生肉をブッ切る父親の腕がカットバックされるイントロ部が静かに強烈。動物を毎日解体できる冷静さを少女は引き継いでいたのでしょうか。

(評価:★5)

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