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[コメント] 幻影師アイゼンハイム(2006/米=チェコ)

ソクーロフの『ファウスト』にも似た光の捉え方がとても美しい。起こった出来事をそのまま記録するようなスタンスのカメラであり、端的に行動のみを描いていく演出が心地よい。奇術にしてもタネを徹底して描かない度胸が中々。序盤ペンダントを渡す場面での内側からの切り返しや窓に立ったノートンを見上げる群衆たちなど、サイレント映画を勉強したであろう画面が多々ある。「視線」の捉え方もきちんとしている。
赤い戦車

本作で重要なのは奇術が成功するかしないか、或いはノートンジェシカ・ビールの行く末の不透明さからくるサスペンス、もしくはジェシカ・ビールへの想いの強さから発生するメロドラマ、ショットと演出がそれらを補完しうる強度になっているかどうかであって、トリックや結末の意外性などはどうでもいい些末な部分なのだ。

それ故、トリックの「説明」をしてしまうラストは痛恨のミス。むしろマクガフィン的な扱いに留めておくべきだったのではないか。「説明」とは簡単に言えば理由や原因を示すものであり、それをすればするほど「物語」が前面に押し出され、サスペンスやメロドラマからは遠ざかり「映画」ではなくなっていく。

・それにしてもこの皇太子役はジュード・ロウに似ている。

(評価:★4)

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