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[コメント] 疑惑の影(1943/米)

ヒッチ作品としては地味だが、恐怖感の積み上げがうまい。
モモ★ラッチ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







姪のチャーリーが叔父のチャーリーを疑いだす過程を追ってみました。

★叔父にもらった指輪に頭文字が彫ってあった。

★叔父が新聞紙で家を作ったのは、特定の記事を他人に見せたくなかったからだと気づき、その切り取った記事を見ようとしたら腕を力いっぱい捻られた。

★家に来た国勢調査員が無断で撮った写真のフィルムを渡すように要求した。(ここから疑惑が生じ始める)

★その調査員の正体は刑事であり、叔父が未亡人殺人事件の容疑者であると聞かされ、協力を要請される。(まだ半信半疑である)

★図書館で例の新聞記事を読む。

★未亡人殺人事件の記事を見つけ、指輪に彫ってあったイニシャルと被害者のそれとが一致する。

★カメラがパンして、姪チャーリーの疑惑が決定的となったことを伝える。

その翌日から明らかに姪チャーリーの態度が変化し、家族に知られないように、水面下の駆け引きが展開していく。(注)

姪はそれとなく叔父の秘密を知っていることを匂わせ、それに気づいた叔父は姪を事故に見せかけて手を引くように圧力をかける。

この二人の駆け引きの緊迫感は圧巻で、特に(家庭内では)叔父を疑うものがいないため、姪が窮地に立たされてしまう。疑惑を自分ひとりで背負い込むから余計スリルが増幅する。(そんなテレサ・ライトは、ちょっと戸田菜穂に似てる)

一方叔父の方はと言うと、こちらも必ずしも利口に立ち回っているわけではない。はずみとはいえ姪の手を捻ったことや、カメラマンに対して頑なにフィルムを要求したシーンを思い出してほしい。

不完全なもの同士の静かな闘い。だからこそ盛り上がる。

それとは対照的に妹エマは兄の帰還にただただご満悦。その夫は友人と殺人方法について話し込むことに夢中。コメディ・リリーフの役目を負う。

と、ストーリー展開の妙は無論、人物が微にいり細にわたって描かれているが、ただ一人、刑事だけがいてもいなくても良い設定だった。姪チャーリーに疑惑を持たせるためだけに必要だったわけだが、あまりにも扱いがひどすぎる。ヒッチにとっては、邪魔なキャラだったのだろう。

ちなみにヒッチ登場は、チャーリー叔父さんがサンタローザに行くために乗った列車で医者夫婦とトランプをしている後姿。顔は見せないがあの体型ですぐに分かる。

(注)ただ、ここでの変わり身の速さは潔すぎて、姪にあまり信頼されていなかった叔父さんのことを考えると少しかわいそうにもなり、一方でヒッチの人物描写の限界も感じる。

(評価:★4)

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