[コメント] 崖の上のポニョ(2008/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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“ラブストーリー”と書いたのは、僕は序盤からこの映画をポニョとソウスケのラブストーリーと見立てていたから。偶然の出会いがあり、お互い好き合っていることを伝え(「ポニョ ソウスケ、スキ!」のくだり)、一時の別れをはさんで再会、そしてその愛を確かめるかのようにふたりで旅をし、最後はキスで終わる。5歳の子どもが主人公だが、ふたりは恋愛映画で恋人たちが歩む過程に近いものを進んでいく。
ふたりの愛を見守る視点にいるのがリサであったり、フジモトであったりする。リサは恋をした子どもに対して理解の深い母親のようだし、逆にフジモトは子どもの恋を受け入れられない頑固オヤジのようで、強がりつつも終盤では寂しそうな雰囲気も残していた。
そんな親たちの力を借りずとも、子どもたちはふたりで強く育っていく。ソウスケの姿は危なっかしいようにも見えて、きちんと力強さも感じさせていた。介護施設で車椅子生活だった老人たちが歩き出すことも重なるのだが、まだ人生の表舞台には立っていない子どもや逆に表舞台からは退いた老人にも、しかっりと活力が宿っているんだということ感じさせてくれた気がしたのだ。しかも、大地が水に覆われたいわば温暖化の行く末のような環境で…。人間ってまだまだ強いんだな、とポジティブに思わせるような希望を感じたのだ。
また、かつて人間だったフジモトは人間の愚かさをひとり呟く。これは宮崎駿お得意の説教臭い自然謳歌への序章かと思われたのだが、今回はそれがなかった。もちろん、メッセージの中に自然への愛は込められているのだが、それ以上に今回は人間愛が勝っていて、うまく調和されていた。
宮崎駿はもはやエンターテインメントの監督ではない、アニメという芸術の中の芸術作家になったのだと思う。古くからのファンはそれを嫌うだろう。だが、『千と千尋の神隠し』の奥深さを買った僕は、この『崖の上のポニョ』も素晴らしい作品だと感じた。
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