[コメント] 見知らぬ乗客(1951/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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実は本作を観たのはつい最近。押さえておくべき作品として早く観よう観ようと思っていながらずるずると…しかし出来には感心した。何より他の映画がどれだけ本作を参考にしていたかが分かったから。むしろ多くの映画を観た後で本作を観たお陰で別な楽しみ方が出来たのだと思う。特にデ・パルマは本作の影響は顕著だが、意外な所でジョン=ウー監督作品も本作にインスパイアされたところが多いんじゃないか?と思わせてくれる。ウー監督の細部のこだわりはひょっとしてヒッチコック譲りかな?
物語自身は確かに今に至るも続くTVや映画のサスペンスタッチから何も外れていないのだが、逆に本当にこれが始まりだったんだ。と思わせてくれる。
細かいアイテムと伏線が見事に符合し、ストーリーに無駄が無く、しかもちゃんと伏線として出したものを後で「ああ!」と思わせる辺りの演出はヒッチコックの面目躍如。細部にまで徹底的にこだわっている。
ただし本作の最大の魅力は緻密なプロットやストーリー運びよりも人間の方。なんと言ってもウォーカー演じるブルーノの悪の魅力だ。最初好青年として登場していながら徐々に異常性を増して来るので、後半になると完全にイッちまった役になっていた。しかもこれはブルーノの魅力に止まらない。ブルーノが異常性を増して行くにつれ、ガイまでもが徐々に異常さを増していくことになる。この辺りが又上手い。役者から最大限の魅力を引き出すのが監督の役割とするなら、ヒッチコックほど上手い監督はいないだろう。
狂ってる人間に対抗するには自分も狂うしかない。ここまでやっておいて、本当にガイは正常な生活に戻れるんだろうか?ある意味本作のラストは私にはハッピーエンドには見えない。気の弱い素直なキャラをあそこまで性格悪くしてしまったんだから。
物語の丁寧さは言うまでもないが、最後のメリーゴーラウンドのスピード感はアクション作品としても一級品。あのスピード感溢れる演出はやっぱり生の迫力だな。
尚、本作で見事にストーカー役を演じてくれたウォーカーは既にアルコール中毒で、本作の撮影終了後、程なく他界。そう言う意味でも一世一代の演技だったといえよう。
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