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[コメント] LOOK(2007/米)

ワンアイデアで終わらず、群像劇としても面白い。監視カメラの捉える光景が、主として犯罪、セックス、嘘といった、大小様々な「罪」である辺りにキリスト教的視点を感じるが、といってそこに道徳臭は無く、やはり飽く迄も無機質な機械の目。
煽尼采

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







完全に主観性ゼロの視点に徹せず、演出上のズームアップを入れているのがやや反則的だが、携帯電話のカメラやパトカーの記録カメラによって画面に動きを入れているのは面白い。

監視カメラの冷徹な客観性が垣間見えるのは、例えば、少女の嘘がバレるシーン。教師を誘ってセックスし、後で彼に腹を立てて「強姦された」と訴えた彼女は、監視カメラの映像と音声の記録によってその嘘が暴かれてしまう。だが、少女から誘ってきたにも関わらず、教師は、未成年者との淫行の罪で人生を棒に振ることになってしまう。結局、少女の嘘が証明されたことは、彼の人生を大して救ってはいない。むしろ彼女とのセックスが記録されていたことで、彼の罪が確定してしまうのだ。

或いは、同僚たちから苛められ続けていた男の顛末。その日頃の鬱憤からなのか、彼は母親に連れられた幼女を密かにつけ回し、遂にはまんまと攫ってしまう。このロリコン男があの苛められ男であることは、彼の会社の監視カメラに映った帽子がクローズアップされた瞬間に初めて観客の知るところとなるのだが、逆に、この帽子で顔が隠れていたせいで、幼女誘拐はそのまま解決しないままに映画は終わる。ラストで、警察官の制服を着た男に声をかけられた苛められ男は、逮捕を覚悟した表情になるが、これは彼の同僚たちが仕掛けた、誕生日祝いの出張ストリップだった。この結末で、男の犯罪が雲散霧消する半面、「弱い者に欲求の捌け口を求める」という図式から、男を残して同僚たちが離脱する。ユーモラスであるのと同時にやり切れなさをも感じさせる、絶妙なラスト。

因みに、アラブ人風の青年がテロリストと間違われるシーンがあるが、彼がバスに置き忘れた鞄に入っていた本の表紙の「algebra(代数学)」という英語は、実は語源がアラビア語。

(評価:★3)

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