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[コメント] 12人の怒れる男(2007/露)

ゼロ年代ロシアの悲哀。ミハルコフの職人芸。
SUM

ストーリーの重要な所でオリジナルを踏襲しつつ見事に脚色している。秀逸なオマージュ。

ミハルコフ。すこぶる才能のある芸術家。一方で、ロシアの悲哀を描く傾向がソ連崩壊以後強まっているが、体制側に近しい人物であり、政治的野心も指摘されている(指摘されているのは事実、本人が抱いているかどうか、確かなことは私は知らない)。そしてチェチェン問題を取り上げ、現代ロシアの批判を描いてすらいる。プーチン時代に。確かに一定の問題提起を、ロシア国内にも海外にも打ち出している。しかし、決して「体制にたてつくわけではない」。非常に積極的な「保守」のあり方なのかもしらん。

一番美味しいところを最後にニキータ・ミハルコフ監督自身が分する陪審員が持って行ってしまうのは、ああ展開したらそうしか落としどころはないだろうと思いつつ、映画のバランスとしてはとても危うい。

本作がチェチェン問題を取り上げていることを肯定する意見に対して「チェチェンをロシアが飲み込む映画だ、その視点を肯定するのは危険だ」と声をあげているむきも見かけた。確かにその通りだ、しかし批判的に取り上げることが善と言い切れるほど偽善に満ちた映画なのだろうか、アートとして出来映えがしっかりしているが故に答えは容易ではない気がする。いや、エンターテイメントなんだけどね。

(評価:★5)

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