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[コメント] 踊る大紐育(1949/米)

三人の楽しそうなダンスを見せることこそ目的。その目的のためには物語は最小限度で良いのです。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 舞台劇「オン・ザ・タウン」の映画化で、ドーネンとケリーの共同監督作。

 ジーン=ケリーとフランク=シナトラ共演のミュージカル。この二人は相性が良いらしく、本作を含め『錨を上げて』(1945)、『私を野球に連れて行って』の三作のミュージカルがあり、三部作をなしている。その中でも最も出来が良いと言われるのが本作。

 本作の大きなトピックはこれまで室内にとどまっていたミュージカルを外に連れ出し、大々的なロケを行ったことにある。冒頭に現れるニューヨークの町は当時のニューヨークの町そのままで、まるで観光案内のよう。これはケリーの希望によるものだそうで、これまでに無かったことで撮影には相当苦労したそうだし、実際にほんの僅かな時間で終わってしまうが、常に新しいものを求めようと言うケリーのチャレンジャー精神が良く出ていた点だ(実際に野外ロケミュージカルが成功するには『ウエスト・サイド物語』(1961)を待たねばならないが)。

 物語そのものは基本的に脳天気に、流れるように過ぎて唐突に終わる。決して物語的に優れているとは言い難い作品ではあるが、本作の目的そのものが物語を見せるためではない。ダンスこそが本作の売りに他ならない。

 そう言う意味ではダンスシーンに特化したと言うその一事で本作は優れた作品であると言ってしまえる。

 ただ、やはりケリーのチャレンジャー精神はそこだけでは満足できなかったようで、所々「おや?」と思わせる部分が出てくる。割とケリーの発言は社会批判になっている事が多いのだ。この発言は当時のハリウッド・コードに抵触しそうな気もするのだが、その辺はやはりネームバリューとダンスで上手くごまかしたのだろう。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)りかちゅ[*]

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