[コメント] 孤独の賭け(1965/日)
商店街を歩く女性たちをディゾルブで繋ぎながら、クレジットが入るのだが、この抒情的な処理がとてもお洒落で、こゝを見た時点で、傑作の予感がする。最終的に傑作とまで云うと云い過ぎだが、しかし、本作も再評価すべき映画だと思う。
冒頭はクリスマスイブの夜で、一人銀座を歩いてた佐久間は、車に轢かれかかって、後部席から出て来た実業家の天知茂と知り合う。本作は佐久間と天知の成り上がりの物語だ。全体に詰め込みすぎのプロット展開だが、ビジネス上の駆け引きもさることながら、天知と佐久間の男女の機微がよく出来ているのだ。科白もいちいち面白い。この辺りは原作の良さだろうが、画面もキビキビ繋いでよく見せている。かなり端折った展開なので、とても短いシーンをどんどん繋ぐが、分かりにくくはなっていない。
端折ったプロット展開の中で、ナイトクラブのシーンが何度かあり、シャンソン歌手−岸洋子の歌唱を2回聞けたり、天知のフラッシュバックを斜め構図で見せる演出の統一や、佐久間と岩崎が二人で暮らすアパートを高台の階段上から撮った良いショットがあったりする。
また、多くの脇役が出て来る群像劇でもあるが、佐久間と天知に次いで重要な役は、天知の秘書の小林千登勢で、ラストまで佐久間と対比して描かれる。もう一人、天知が頼っていた金融屋−内田朝雄の一番番頭として登場する春日章良が良い役だ。この人も終盤まで何度も主役の二人に絡む役。最初は、内田の娘−宮園純子との結婚を目論んでいるが、宮園が天知の部下の梅宮辰夫と結婚してしまうと、次に佐久間を狙う、というイヤらしい奴なのだ。これらに比べると、梅宮は、ほとんど目立たない。科白もほとんど無い扱いだが、中盤以降、他の役者の科白で名前は何度も出てくるので、余計に出番無しが気になってしまう。また、クレジットでは「新人」と添え書きされている大原麗子が、佐久間の従妹の役で映画デビューとのことだが、ずっと関西弁を喋る不良娘で、印象に残る役ではある。だが、プロット展開上、大原と岩崎は、もっと早めに退場させる、あるいはもっと刈り込んでも良かったのではないかと私には思えてしまう。
といった、少々いびつな構成の部分もあるが、エンディングのちょっとビターだが、主人公二人の将来への決意が感じられる帰結も絶妙だと思うし、歩く足のショットを繋げて暗転する表現もあなどり難く、エンディングでポイントを上げるのだ。かなり良く出来た映画だと感じる。
#備忘でその他の配役等を記述します。
・岩崎の恋人の大学生は岡崎二朗。
・佐久間が菅原から紹介される証券マンは山浦栄。
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