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[コメント] K-20 怪人二十面相・伝(2008/日)

お金をかければ何でも良い、というものでもないと思いますね。
chokobo

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ポプラ社の江戸川乱歩シリーズは小学校に通っていた頃の大きな楽しみでした。実は母方の実家にもっと古いシリーズが保存されていて(確か伯父のものだったと記憶していますが)それを家に持ち帰って、黄ばんで硬くなったページを恐る恐るめくって読んだ「明智小五郎」の推理ドラマは忘れることができません。本の表紙がまたとてもリアルで想像力を掻き立てました。

本作にも登場する「小林少年」も”少年探偵団”を名乗り、明智探偵を支えます。道に迷わないように、ところどころにバッジを置いて怪しい人を追跡するなど、昭和の時代のアナログでデジタルなツールにわくわくしました。

「探偵手帳」なるものが流行したのも、この時代のトレンドを示すものでしょう。紙に暗号を書いて、証拠が消えるように、水に溶けるものだったり・・・。買ってもらって嬉しかった思い出が蘇りますね。

さて、この映画ですが、まずビデオ屋に行って何気なく借りたものがメイキングだったのが印象を悪くしてまして、とてもがっかりしたことが恨みの始まりです。

ようやく本編が貸し出しになって、先日漸く借りて見たのですが、大変残念なことに茶番でした。

いや、茶番であることが江戸川乱歩作品の醍醐味であることを考慮すれば、かつて松竹でいくつかのバージョンで作られた『RAMPO』シリーズに比べれば、われわれの世代を喜ばせる内容であったかもしれませんが、映画としてはB級、二流の作品です。

素晴らしいセットとアクション。CGで作られた多くのシーンに悪い印象はありませんが、この映画を見て感動することはできませんでした。

ただ、救いなのは、この時代(フィクションですが)の階級とか格差について明快に作者の意志が示されているところだけは評価できると思います。

階級社会の中で埋もれる主人公(金城武)と、明智探偵と婚約する華族の女性(松たか子)の意思が少しずつ重なって、時代に変化を与えようとするラストは、今の新自由主義に対するアンチテーゼという意味で評価できるものと思いました。

そして主人公は新たな二十面相として生きる決意をしますね。アンダーグラウンドで生きてゆこうとする意志。それはまるで『バッドマン』のような世界を示唆しているようにも思えます。

でも、こうした印象も全て、この映画独特のものとは言えず、いずれの発想もどこかの映画のパクリでしかありません。パクリを前面否定するものではありませんが、かつての映画の良い部分を取り入れて、新しい表現や世界を生み出すのが映画科学アカデミーの発想であって、ただ単にパクリを良しとするものでもありません。

大変残念なお金のかけかただったといわざるを得ません。

2009/08/02

(評価:★2)

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