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[コメント] BOY A(2007/英)

ジャック(アンドリュー・ガーフィールド)の周りの人たちの反応は、極自然である。だからこそ、この提示は重い。
Master

**ネタバレ注意**
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加害者への制裁を国が用意したシステムに任せている以上、社会はそのシステムを経て、「更正」した加害者を受け入れるべきであるというのは理論としては理解できても、本能はそれを忌避する。事故に遭った車の中から少女を救い、絡まれている女性を救出する心優しい人間が昔、地域社会を震撼させる殺人事件を起こしていたという事実。異質なものを忌避する本能と、その情報を知るまでに体験として得て来た情報による判断が、180度真逆の行動を促すため、本作は観客に葛藤を強いる。

本作品の優れている点は、実際の事件のときを除けば、不自然・理解できない行動をとる人間が全くいないことである。もちろんジャックの素性をばら撒いたテリー(ピーター・ミュラン)の息子ゼブ(ジェームズ・ヤング)は大いに責められるべきだろうが、彼の素性を考えるに父親が自分の知らない「犯罪者」のことを自分よりも誇りに思っていると知ったら、自棄を起こすのもおかしくはないだろう。だからこそ、ゼブにそのことを告げられたテリーは黙って立ち尽くすしかないのである。

おそらく、ケン・ローチならもっとこの悲劇を際立たせるやり方を選んだであろうが、あまり起伏のないやり方になっていて、その分終演後考えさせる構成になっている。なかなか良作である。

(2008.11.15 シネアミューズWEST)

(評価:★4)

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