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[コメント] 悪夢探偵2(2008/日)

前作はJホラー的表現を塚本的表現で再構築するというのが大目標だったと思うが、今回はすでに自家薬籠中のものとした後の塚本流という味だった。
MSRkb

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 物語の構成としてはがちゃがちゃしてて焦点がぼやけているかもしれないが、恐怖シーンの演出はとても良かった。「小中理論」を念頭においたJホラーで、時として恐怖シーンの演出が理に落ちすぎる瞬間というのがあるように思う。理で説明できないものを描くためのメソッドなので変な話だが、これはむしろ映画と観客との関係性の問題かもしれない。まわりくどいこと書いたが、要は「OK、“あれ”ね!」と我々のほうが先回りしてしまうようになったということだろう。慣れというか、クリシェになってしまったというか。

 で、今作の塚本流恐怖演出は、Jホラー的なイメージを前作よりもふんだんに配置しているが、そこからは確実に一線を画する強度を持っている。友達が死んだ日の夜に部屋で一人ぼっちのシーンとか、後半山場のシャーペンかちかちさせてる女の子が追ってくるんじゃないかというシーン(外階段を上がってくるのは誰しも想像できたと思うが、あの見せ方の間合いは素晴らしい!)などなど、珠玉の恐怖シーンがいっぱいだ。顔アップを多用しつつ余白で背景に注目させるというキメキメの構図かつ圧迫感のある絵作りを、手持ちカメラの不安定さと編集の間合いでざざっとスピード出して見せて、観客を決して落ち着かせない。いいよねこれ、いいよ! 全部自分でやる人だからこそ、という感じだ。

 あとは、本作は「激しく恐怖を感じている人がいると、それを見ている周りの人にも恐怖が伝染してしまう」ということについてちょっと触れていて良かった。つまり恐慌だ。ペペロンチーノさんが本作へのコメントで黒沢清の『回路』について触れていたが、まさにそうだ。恐怖の伝染についての映画として『回路』と『悪夢探偵2』は兄弟関係と言ってもいいかもしれない。あっちは静かに世界と人間の関係性が崩壊していったけど、こっちはすごい勢いで個人の人間性が崩壊していってる。いいよねーそういうの。回想の食卓シーンで市川実和子が恐慌をきたすシーン、ほんと厭な感じでいいわー。ふりかけもっといる? っていうのがとてもいいよ。

 とにかく恐怖シーン全般は良かった。あと市川美和子はエロいわーということに気付かされた。ごめん、市川美和子というと『アナザヘヴン』しか印象にになかったんだ……。

(評価:★3)

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