[コメント] レボリューショナリーロード 燃え尽きるまで(2008/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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『イントゥ・ザ・ワイルド』の後にこの映画を見たわけです。すると、自然と闘い共生しようとする青年の話と、都市に住む夫婦の罵り合う話との変化についてゆくのが大変でした。
作品解説でケイト・ウィンスレットのインタビューが印象的でした。彼女がこの原作に惚れ込んで映画化しようとしたんですね。そして夫のサム・メンデスを説得し、レオナルド・ディカプリオを引き込み、この作品を作ったということです。
明らかにサム・メンデスタッチですし、音楽もトーマス・ニューマンですし、印象が『アメリカン・ビューティー』に重なるんです。従って、ケイト。ウィンスレットが積極的に映画化しようとしたことが意外な感じでした。最もサム・メンデスタッチな映画。それはアメリカの平凡な家族の中に隠される破壊の種ですね。それを誰もが見て見ないふりをしながら過ごしています。その種が爆発の原因を生み出す。サム・メンデスタッチですね。
この映画に出てくる象徴的な人物がいます。精神病の男性です。彼は全くピンボケな台詞を繰り返しますが、実はこの夫婦が抱えている真実をえぐるようなことを言うんです。一度はパリに移住しようとし、その後奥さんが妊娠し、ご主人が会社で昇進することをきっかけに同じこの住まいに止まる決意をしたときの台詞が印象的ですね。
お腹の子供を指指して「僕はこの子じゃなくてよかった!」
そうです。夫婦愛は醒め、いずれ生まれてくる子供は決して恵まれた子供として生まれてくることはないでしょう。結果的にこの子供は流産し、母親も覚悟の自殺をしてしまうんです。この母親の決意がこの映画を貫きます。彼女は妻や母親としての本性を自覚せず、あくまでも元女優であることから脱却できずに、家庭で演じることも続かなかった。近所のご主人と車で抱き合うなど、女性としても本性しか生かすことができなかった。そういう女性です。
良く考えれば、女優という仕事そのものが精神病を抱えているような仕事ですからね。それを普通の家庭で生かすことなど、奇跡以外の何物でもないのかもしれませんね。
先日、芥川賞の発表があって、某大手商社に勤務する方の作品(「終の住処」)にとても類似する感覚を抱いたんですが、所詮夫婦は他人ですからね。ショットガンマリッジという言葉もあるようですが、誰もが脅迫されて口元にショットガンを突きつけられるような結婚を経験しているんでしょうか?そして実際の結婚で辛い経験を重ねる。
この映画はアメリカという国に長く続く消費社会、重商主義的な世界の中に埋もれてゆく夫婦の苦悩が描かれていますね。
最後に老夫婦の日常会話で、夫が耳が不自由なことを良いことに補聴器のボリュームを下げて、妻の会話を遮断します。これが夫婦長持ちの秘訣とでも言いたいようなシーンですね。
とても考えさせられる映画でした。
あたたは夫に同調しますか? 妻に同調しますか?
2009/8/12
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