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[コメント] ノン子36歳(家事手伝い)(2008/日)

ヘタレ寅さんとヒヨッコ娘
TOMIMORI

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







マサルがフラリと町に現れて屋台を出そうとするところはまさに寅さんであり、切れ長の眼に四角顔の星野源は渥美清を思わせる。 寅さんと違うところはきっちりマドンナに手をつけるところや、祭りからはじき出されてしまうことであろうか。

マサルは駅の改札口で見られたようにお年寄りに親切であるのに対して、鶴見辰吾は「係員にお知らせください」のアナウンスを無視することでテキトーで不誠実なキャラを演出していたが、マサルは確かにキレると何をしでかすかわからないが、あくまで憎めないキャラクターだ。 マサルのような好青年とは言いがたいが、それは初期のバイオレンスな寅さんにもどことなく通じる。

マサルの言う"仁義"はよくわからないが、津田寛治の言い分はある程度は筋が通っており、単純に"閉鎖的なムラ社会"と括ることはできないため、祭りをぶっ壊す行為もただの異常者にしか見えないのだが、(津田に頼み込む時に壁を叩いてチラっと凶暴的な本性を覗かせるのが効いている。) 悪いのは彼を受け入れない町ではなく彼自身なのだというふうに焦点が個人的な人間性に収束してしまったのがなんだかつまらない。

フィルムコミッションで撮る以上、舞台となる町を悪く描きにくいんだろうけど、男性としてマサルに感情移入して見るとスケールの小さな話になってしまったのが少し残念。ATG映画だったらもう少し違った町の描き方をするんだろうな。

とはいえ、この作品はあくまでノン子が主役だからそれでいいのかもしれない。 なんといっても坂井真紀のヒヨコみたいな顔なのでビジュアル的な調和が面白い。 ノン子はあの事件をささやかな思い出として 野良猫よろしく野良鶏のようにあの町でこれからも生きていくのだろう。

おそらく都会でくすぶるのも田舎でくすぶるのも彼女にとっては大差ないことなのだろう。あの男と手を切ることができただけでも彼女は成長したのだ。 都会でくすぶっている僕から言わせると田舎でくすぶっている方がまだマシだとさえ思う。そんな意味で寄居町を魅力的に映し出した撮影は成功していたと思う。

(評価:★4)

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