[コメント] 英国王給仕人に乾杯!(2006/チェコ=スロバキア)
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ありきたりな表現で申し訳ない。
チェコの文化・歴史は日本とはだいぶ異なるのだが(当たり前だ)、民族性や社会のあり方に、どこか現代の日本と親和するものを感じる。なぜだろう。世俗的な利益にさとく、日和見的な平和主義だからだろうか。女体盛り?をやってたからだろうか(←日本のオリジナルじゃないんだね。よかった。・・・もちろん私はやったことないス)。
「プラハはドイツ帝国の美しい街」「ボヘミアの森からカルパチアの山脈まで、総統がすべてのドイツ人を解放してくれる」これは映画の中で、ズデーテン地方出身のドイツ娘が、(おそらく)ヒトラーが実際に語った言葉をもとに陶然と語る台詞である。もし日本が島国でなく、周囲にこんなことを言う他民族がいたとしたら、確かに鬱陶しいだろうなぁ、と実感する。だが同時に、ドイツ民族にとっては、特に辺境で、地域では少数勢力で、虐げられてきた当の民族にとっては、勇気と高揚感をもたらす言葉であったろうことも想像できる。今のヨーロッパに、オバマ米大統領をヒトラーになぞらえる輩が少なからずいる。被差別の歴史と和解の象徴を、こともあろうに究極のレイシストに例えるのである。たいていは、品性卑しく教養もない極右勢力でとるにたりない存在なのだろうが、彼(オバマ)の弁舌の巧みさが、ヨーロッパ人には実感としてそう思わせるものなのかもしれない。
主人公は、ドイツとの国境近くの廃村に住まわせられる。もとはドイツ人とチェコ人が一緒に住んでいたのが、チェコがドイツの属領になったときにチェコ人が追い払われ、ドイツが戦争に敗れ、チェコが独立を回復したときに今度はドイツ人が追放されたのだそうだ。数世紀も続いた集落が、20世紀の生んだ戦争によって失われてしまった。寂びれた廃屋を見て私が思い出すのは、日本の中山間地域の≪限界集落≫である。ここも同じように、数世紀続いた集落が消えてなくなりつつあるし、実際になくなっている。敗戦に起因するものではないが、日本は戦後60余年、いったいなにをやってきたのかと反省すべきことなのだろうか。それとも、都市化と高度な消費主義という、同じ現代文明が生んだ現象とくくることが出来るのか。
とまあ、いろいろなことを考えさせられた。ちっとも映画の感想になってないね。
85/100(09/08/30見)
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