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[コメント] チェンジリング(2008/米)

クリント・イーストウッド、よく出来ました。アンジェリーナ・ジョリー、よくお似合いです。でも、この話は好きじゃない。
ぐるぐる

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







これ以上ないくらい「上手い」映画なのだけど、どうもすっきりしない話に思えてしまう。

ネット上で調べてみれば、実際の事件では、裕福な中産階級だったクリスティーン・コリンズの元夫はヤミ酒場経営で服役中で、ウォルターの誘拐事件も、ロス市警は先に出所した仲間の復讐という線で捜査していたとか。

誘拐殺人犯は、少年たちへの性的暴行が目的で、甥だけではなく母親も共犯として関わっており、裁判ではこの母親がウォルター・コリンズの殺害の実行犯として自供しているとか。確かに遺体の確認は不可能だったようだが、実際の犯人たちの供述からすればウォルターが「逃げた」可能性はまず無い。

「偽」ウォルターは、コリンズ夫人が精神病院に収容されていた10日間のうちに、ハリウッドに行ってみたくて嘘をついていたことを告白し、そのためコリンズ夫人は精神病院から出られたのであって、スタンフォード・クラークの告発によって連続少年誘拐殺人事件が明らかになるのはその後の出来事だったとか。

ロス市警内の「正義の人」であるヤバラ刑事は実在の人物ではなく、上層部に逆らって捜査を進めたというエピソードも脚本上の創作だとか。

要するに、脚本のJ・マイケル・ストラジンスキーは、実際の事件に取材しながらも、随所に微妙な改変を加えていて、結果としてここでアンジェリーナ・ジョリーが演じたキャラクターは、おそらくはずっと冷静でタフだった実際のコリンズ夫人とは少々違い、より感情的で「善意の被害者」としての面が強調された造形がなされていて、そこが何ともウソ臭い。

どうも、この映画はクリント・イーストウッドにとっては、所詮雇われ仕事だったような感が拭えず、その分、作家性よりも職人性が前面に出た仕上がりになったように見える。上手さばかりが目立って、残念ながらそれ以上の感動は無かった。

(評価:★3)

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