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[コメント] 果てしなき情熱(1949/日)

服部良一の曲を使っているが、半生を描いているわけではない、という断り書きが最初に出る。雨の鋪道。排水溝からクレーン上昇移動する。街の女が、ストッキングを上げる。銀座か。
ゑぎ

 クレーンで街路樹の上まで上昇して右に移動。スレート屋根を映しながら、窓へ寄る。こゝまでワンカット。次に堀雄二の暗い部屋。コップを手前に映し、奥のドアから女性が入って来るディープフォーカスショット。この映画、パンフォーカスと云ってよいショットがいくつかある。入って来た女性は月丘千秋で、堀の自殺を止める。このあたりも、ずっとローキーかつ寄らない画面。大きな窓に雨が流れる影。堀が窓のところへ行く。今度はカメラが窓から通りへ移動し、街の建物や、その奥にミニチュアの電車を走らせる。こゝから回想に入る。

 キャバレー「サンモン(SanMon)」。最初の歌唱は、山口淑子の「蘇州夜曲」で、彼女が扇子から顔を出すと、綺麗!と思う。ボーイの江見渉が、バックルームへ入り、月丘に抱きつく。これは今見ると完全にセクハラ。月丘、逃げて調理場へ。調理台で突っ伏している男が堀だ。月丘は女給(と云ってもホステスというよりは給仕)で、堀は作曲家だ(キャバレーの音楽監督か)。

 先に歌手や楽曲のことを書いておこう。上に書いた山口淑子は完全なゲスト出演。同様に、終盤、淡谷のり子が登場し「雨のブルース」一曲だけを唄う。筋にからむ歌い手は二人出てきて、まずは笠置シヅ子。彼女は月丘の親友役だ。キャバレーの舞台では「湖畔の宿」「セコハン娘」「ブギウギ娘」などを唄う。「セコハン娘」の歌詞が面白い。もう一人は服部富子。彼女は唄えなくなった歌手という役だが、終盤、「夜のプラットフォーム」で復活する。

 また、ヒロインは月丘で間違いなく、彼女はずっと堀を慕い続けるが、堀が惚れるのは、信州の湖畔で溺れている犬を助けた、その飼い主の折原啓子だ。完全に掘の一目惚れで、ほゞ全編、彼は折原に対して片想いをしているという屈折した展開。さらに彼のキャラ造型の陰鬱さは尋常じゃなく、独白モノローグも、ヒソヒソ声。あるいは、なぜか、これは自分の歌だ、自分だけの歌なんだ!と云って、いちいち演奏・歌唱をやめさせる部分なんかがとても変なのだ。この陰鬱さの徹底は私には逆に面白く、ニヤけながら見たが、しかし、作品としては、シーン間のバランスが悪い造型と云わざるを得ないだろう。特に、終盤の「ブギウギ娘」歌唱シーンにおける笠置のおどけた演技・演出は、陰鬱な展開の中で、唐突に挿入され、流石に違和感があった。

 尚、タイトルの「果てしなき情熱」が惹起するエモーションも、少なくも堀を通しては、まるで描かれていない、という感覚を持つが、これは月丘の堀に対する感情、あるいは、エンディング以降の(映画が終わった後の)彼らの再起に関するものなのかも知れない、と思った。

(評価:★3)

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