[コメント] くちづけ(1955/日)
「アタシ思春期だからときどき訳の判らないこと云うけど気にしないでね」
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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ザ・石坂洋次郎の2作とその反転1作。
あけっぴろげな女の子の、対等な議論による成長物語。石坂原作の映画世界は本作でも快調であり、1章と2章は恋愛と結婚について、観念が体験に移ってゆく様を描いて肯定的、特に中原ひとみの水を得た魚の如く画面狭しと跳ね回る姿が眩しい。
3章はこれらと大いに趣が違う。これは日記という秘密を巡る掌編であり、あけっぴろげさは消えてなくなる。美醜に関わるユーモアは面白いが残酷でもあり、このリアリズムは成瀬のものである。
製作に名を連ねた成瀬はこの3部作を統括しているのだろう、という前提で云えば、この反転が撮りたくて、不得手な箇所は他に任せて美味しい処を取ったと見えるのである(監督以外のスタッフは同じ面々)。『青い山脈』ほか石坂作品は戦後民主主義のひとつの成果と見なされるべきもので、本作の前2作は古き良き時代を確かに記録している。成瀬のリアリズムは正反対の志向があり現代的だ。この対立を並べてみせる方法は興味深く、成瀬の批評精神の現れと見たが、どうなんだろう。
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