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[コメント] レスラー(2008/米=仏)

キリストとランボーと。
地球発

 彼にとって、リングの外はリング内よりも過酷だった。 リング外の彼が惨めであればあるほど、リング内の彼は輝いて見える。

 主人公とストリッパーとの会話で映画「パッション」が出てくる。キリストが拷問を受けゴルゴダの丘で磔になるという映画だ。  主人公はこの映画自体観ていないのだが、リング内で体中にガラスの破片やホチキスを打ち込まれる彼は、まるで「パッション」のキリストのようだ。試合後にそれを1つ1つ取り出しながら苦痛に顔を歪める姿は神々しささえ漂わせている。

 リングを下りた彼は、野良犬と化す。職場では蔑まれ、唯一の家族である娘からは毛嫌いされる。何かに似ている。まるでベトナム戦争の帰還兵、ジョン・ランボーのようだ。社会で受け入れられなかったランボーが、自分が輝ける場所である戦場へ戻っていったように、レスラーもまた、自分が輝けるリング上へと戻っていく。

 実際、引退してもまたリング上に戻ってくるレスラー達の多いこと多いこと。この映画はそんな社会に適合しきれなかったレスラー達の声を代弁する。 「俺たちにはリング上しかないんだ」

 是非ドキュメンタリー映画「ビヨンド・ザ・マット」とセットで観てもらいたい。

(評価:★4)

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