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[コメント] 貴族の階段(1959/日)

美点は戦前貴族世界の詳述にいろいろと発見があることか。この武田泰淳作を三島はどう評したのだろう。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







森雅之のような天皇の親類の貴族はクーデターの尻拭いの伝統を生かすべきという滝沢修の陸軍大将の、ああなるほどなあという協力要請から話は始まる。森は尻拭いをするのだろうかと見ていると、映画は226が終わって森が首相に就任する処で終わる。首相になるのは尻拭いということなんだろうか。滝沢がどうなったのか描かれないのも手落ちに見える。 映画は森が、滝沢の娘の叶順子を手籠めにする展開を延々描く訳だが、これと226がどう関連するのだろうか釈然としない。森の貴族の毒が滝沢の陸軍一家にどう(悪)影響を与えたのか、まるで判然としないのだ。ただのエロ親爺という以上ものもが見えない。これではいかんだろう。

クライマックスは反乱軍対警護の警察で菅原謙二が活躍、というのが意外で面白いのだが、そこばかり描いても仕方なかろう。佐々木秀丸の右翼の使い捨てるぜという放言も唐突。長編小説のつまみ喰らいが失敗しているんだろう。モーツアルト41番にそっくりな音楽も安い。

細川ちか子の新興宗教の「貴方には第一アクマが憑いている」なる指摘は廻り回って正解だったという話のようにも受け取れるが、まあ全員アクマなんだろう。彼女は226に連座しようとする(未遂)息子にはアクマは憑いていないと明言するのだが、それが映画の認識なら外しているだろうと云いたい。その他映像美術も見処少ない。女子学生の拳銃訓練はあんな簡単に命中するかよと思う。階段からもうひとりふたり、転落しても良かったのではなかろうか。

(評価:★3)

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