[コメント] こころ(1955/日)
この作品は珍しく市川崑らしさというものが感じられませんでした。
夏目漱石の「こころ」は私が純文学にハマるきっかけとなった思い入れのある小説です。そんな思い入れのある小説を市川崑監督が映画化。しかも先生は森雅之。どの角度から見ても私の好きなもので溢れていたんですけれども、それらはどう頑張っても、私には噛み合うとは思えませんでした。そして映画を観終わった後もやっぱり同じ思いでした。なんとなくちぐはぐに感じたし、互いの良さが喧嘩しあっているようにも感じました。原作の不穏な空気と市川崑の不穏な空気は似て異なるものだったんだと思います。
また先生を演じた森雅之ですが、こちらも私にとってはミスキャストに思えました。森雅之は大好きな俳優さんです。でも彼の神経質そうな感じとか元々持っている陰の雰囲気とか彼の要素が、私の思い描く先生とは全く違っていたからです。森さんは夏目漱石の作品よりも太宰治の作品が似合うような気がします。
そう言った色んなちぐはぐ感が最後まで拭えなかったのが残念です。原作を蹴散らすほど、どっかがドーンと飛びぬけてくれていればまた別だったと思います。 脚本が和田夏十さんだったら結果は違っていたのかな。
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08.08.19 記
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